Wait a moment...

【古事記入門】その49 履中天皇その2

nem97.60xem (5)
257
0
2019-06-12 08:46:27
【古事記入門】その49 履中天皇その2

弟である墨江中王の反乱によって都から追い出され、奈良の石上神宮に落ちのびた履中天皇。

もうひとつ下の弟であるミズハワケが駆けつけてくれます。

 

ここにその同母弟、水齒別(みづはわけ)の命、まゐ赴きてまをさしめたまひき。

ここに天皇詔りたまはく、「吾、汝が命の、もし墨江の中王と同じ心ならむかと疑ふ。かれ語らはじ」とのりたまひし

 

ところが履中天皇は「お前も私を裏切るつもりかもしれないもの、怖くて話なんか出来ないよ」と言います。

 

答へて曰さく、「僕は穢き心なし。墨江の中王と同じくはあらず」と、答へ白したまひき。

また詔らしめたまはく、「然らば、今還り下りて、墨江の中王を殺して、上り來ませ。その時に、吾かならず語らはむ」とのりたまひき。

 

ミズハワケは、「私は裏切るつもりなんかありません」と弁解します。

すると天皇は「それならば、今から難波に戻って、墨江中王を殺して、戻って来なさい。そうしたら信用してあげよう」と条件を出します。

 

かれすなはち難波に還り下りまして、墨江の中王に近く事へまつる隼人、名は曾婆加里(そばかり)を欺きてのりたまはく、「もし汝、吾が言ふことに從はば、吾天皇となり、汝を大臣になして、天の下治らさむとおもふは如何に」とのりたまひき。曾婆訶里答へて白さく「命のまにま」と白しき。

 

ミズハワケは難波宮に戻ると、墨江中王の側近として使えている、ソバカリという名の隼人を呼んで
「おい、お前がもし私の言うとおりに動いてくれたら、私が天皇になり、お前を大臣にして二人で天下を取れるんだけど、どうだろう」と相談を持ちかけます。

ソバカリは「ヘッヘッヘ、ダンナの言うとおりにしやしょう」と答えます。

 

ここにその隼人に物多に賜ひてのりたまはく、「然らば汝の王を殺りまつれ」とのりたまひき。ここに曾婆訶里、己が王の厠に入りませるを伺ひて、矛もちて刺して殺せまつりき。

 

ミズハワケはソバカリにたくさんの贈り物をあげて「ならばお前の主人を殺せ」と命じます。

これを受けてソバカリは、墨江中王が厠に入ったときに、後ろから矛で刺し殺してしまいました。

 

かれ曾婆訶里を率て、倭に上り幸でます時に、大坂の山口に到りて、思ほさく「曾婆訶里、吾がために大き功あれども、既におのが君を殺せまつれるは、不義なり。然れどもその功に報いずは、信無しといふべし。既にその信を行はば、かへりてその心を恐しとおもふ。かれその功に報ゆとも、その正身を滅しなむ」と思ほしき。

 

さて墨江中王を誅殺した二人は履中天皇の待つ大和へ向かいますが、大坂の山口のあたりで、ミズハワケは考え込んでしまいます。

「ソバカリは私のために大きな仕事をしてくれたわけだが、もともと自分の主人だった人を殺してしまうなんて、不義な男だ。だがその功績は認め、褒美を与えなければならない。しかしコイツを重用したんでは、今度はいつかこっちが裏切られる番だ。功績には報いるけれども、コイツ自身は殺してしまいたいなぁ」
なんていう思案をします。

勝手にお家騒動に巻き込んでおいて、いつの時代も偉い人たちというのは身勝手なものです。

 

ここをもちて曾婆訶里に詔りたまはく、「今日は此處に留まりて、まづ大臣の位を賜ひて、明日上りまさむ」とのりたまひて、その山口に留まりて、すなはち仮宮を造りて、俄に豐の樂して、その隼人に大臣の位を賜ひて、百官をして拝ましめたまふに、隼人歡びて、志遂げぬと思ひき。

 

ミズハワケはソバカリに「今日はここで一泊して、お前に大臣の位を授ける儀式を行って、明日、大和まで上ろう」と言って、仮宮を作って宴会を催します。

そこでソバカリに大臣の位を授けて、居並ぶ家来たちに、ソバカリを拝んで頭を下げさせます。
当時の大臣といえば天皇に次ぐ権力者であって、皇族以外の人間が望むことの出来る最高位。先には建内宿禰が、後には蘇我馬子・蝦夷親子などが就任した役職です。

ソバカリはもう「俺は天下取ったゼ」という感慨でジーンと来てしまいます。

 

ここにその隼人に詔りたまはく、「今日大臣と同じ盞の酒を飮まむとす」と詔りたまひて、共に飮む時に、面を隱す大鋺にその進れる酒を盛りき。

ここに王子まづ飮みたまひて、隼人後に飮む。かれその隼人の飮む時に、大鋺、面を覆ひたり。ここに席の下に置ける劒を取り出でて、その隼人が首を斬りたまひき。

 

ミズハワケは浮かれたフリをして「きょうは大臣さまと同じ盃で、お酒をいただこうかな」と言い、顔が隠れるほどの大きな盃に酒を注ぎます。

まずミズハワケが飲み、次にソバカリが盃に口をつけると、盃で前が見えなくなっている隙に、敷物の下に隠しておいた剣を取り出し、斬り殺してしまいました。

 

すなはち明日、上り幸でましき。かれ其地に名づけて近つ飛鳥といふ。

倭に上り到りまして詔りたまはく「今日は此處に留まりて、祓禊して、明日まゐ出でて、神宮を拜まむ」とのりたまひき。かれ其地に名づけて遠つ飛鳥といふ。

かれ石の上の神宮にまゐでて、天皇に「政既に平け訖へてまゐ上り侍ふ」とまをさしめたまひき。

 

ソバカリを斬った翌日、山を越えて大和に入って、キリのいいところで「今日はここで禊をして、明日、天皇のいる神宮に詣でよう」と決めました。

これにちなんで「明日+来る」でそのあたりの地名を「アスカ」、難波から近い方を「近つ飛鳥」、遠い方を「遠つ飛鳥」と呼ぶようになりました。

 

「ホントかよ」と言いたくなりますが、飛鳥の地名の由来には諸説あるみたいです。

https://asukamura.jp/kids/yomoyama_yurai.html

 

そんな感じで履中天皇の話は終わり。

最初に眠りこけていた天皇を運び出した阿知の直も、蔵の官(くらのつかさ)なる役職と領地を与えられたそうです。めでたしめでたし。

 

次回は、活躍したイケメン三男のミズハワケが、反正天皇として即位します。
と言っても、あんまりエピソード無いんですけどね。

この記事を書いた人
東京都北区王子でカフェやってます。