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「学問のすすめ」のススメ②

nem101xem (4) 94 3 0

前回に引き続き、福澤諭吉の「学問のススメ」についてまとめます。以外とその中身は知られていない「学問のススメ」ですが、読んでみると諭吉が当時の日本を客観的に見つめ、その行く末についても示唆に富んだ考察をしています。現代における諸々の問題についても解答を出しており、その先見の明に驚かされます。

今回は現代社会における問題について諭吉がどのような解答を出すのか、まとめていきたいと思います。

 

私刑について

 

私刑(しけい)とは、国家ないし公権力の法と刑罰権に基づくことなく、個人または特定集団により執行される私的な制裁のこといい、リンチとも称されます。

インターネット上では、悪事を犯したと目される人物を正義感をもって衝動的に私刑しようとする行為(ネット自警団)が見られ、主に2ちゃんねるなどの電子掲示板やTwitterなどのSNS・特定のホームページ上において特定の個人を名指しして個人情報(当該人の電話番号や住所・実名・本人の写真・家族構成など)を晒し出したり、名指しで批判や暴言を投稿している場合があります。その対象はいじめの相手・掲示板やSNSで炎上した一般人・犯罪を犯した容疑者・暴言や失言及び不祥事を起こした芸能人を含む著名人など多岐わたりますが、実際に私刑は日本の法律において禁止されています。

また名誉毀損やプライバシーの侵害にあたる可能性もあり、その正当性については賛否両論があります。

この「私刑」について諭吉は「学問のススメ」で明確に否定しています。

 

国民が政府にしたがうのは、政府がつくった法にしたがうのではなく、自分たちが作った法にしたがうということなのだ。国民が法を破るのは、政府が作った法を破るのではなく、自分たちが作った法を破るということなのだ。

国民の役割は自分の代理として政府を立てて、国内の悪人を取り締まって、善人を保護することである。また、政府との約束を固く守って、その法にしたがって保護を受けることである。

このように国民は政府と約束して法を作る権力を政府に与えたのだから、決してその約束を破って法に背いてはいけない。

自分で勝手に犯罪者を殺し、あるいは盗賊を捕らえてこれを鞭打ったりすれば、国の法を犯して、勝手に他人の罪を裁いたことになる。これを「私裁」という。許されないことである。

 

諭吉は「私裁=私刑」がよくない理由について以下のように述べています。

 

盗賊が財産を奪おうと家に侵入してそれを捕らえることができたとしても、そこで怒りにまかせて殴ったり、殺したりすればその人自身が法によって裁かれることになります。法とはそのように厳格なもので罪のあるなしに関わらず適応されるものであるため善人であっても罪人になってしまう。

また、忠臣蔵のような仇討ちも、仇討ちが仇討ちを呼び、最後に双方の一族が死に尽くすまで終わりがない。

無政、無法の世の中とはこういうものであろう。

 

想定外のような犯罪に対して法が裁きを与えられないような場合でも忍耐強く法に訴え続けること、そうやって国民が政府を作っていくことが大切だと諭吉は説きます。感情論的に「私刑」を実行する人たちは決して称賛されるべきではないし、それを拡散する行為についても同様だと思います。

たしかに最近の炎上行為や犯罪には目に余るものがありますが、私刑を介さずに正当な訴えのもと、法によって裁かれるようにあって欲しいと思います。

 

ハラスメントについて

 

諭吉はハラスメントについても「学問のススメ」の中で言及しています。

アメリカ人であるウィーランドの著書「モラル・サイエンス」の本から人間の心身の自由について引用しています。

 

人間の身体は、他人と離れて一個独立しており、自分自身でその身体を取り扱い、自分自身でその心を用い、自分で自分を支配して、するべき仕事をするようにできている。(中略)

したがって、人間の身体、知恵、欲、良心、意思は個々のそれぞれのものであり、この性質を自由自在に操ることで個人の独立が達成できる。

したがって、自分も他人もこの力を使っているのであって、お互いにその働きを妨害してはいけない。

 

諭吉は人はそれぞれに世に果たすべき役割があるといいます。世の中に1日たりとも男性が必要でない日はなく、女性が必要でない日もありません。それぞれに能力の差はありますがその働きは同様であり、役割が違うだけであると明確に述べています。

ハラスメントは自分の考えで他人を縛ることに原因があります。ここの「独立」を互いに認め合い、それぞれの役割のもと協力して世の中の「仕事」をすることが、国を良くすることになるのではないでしょうか。

 

お金について

 

後の「お金」の象徴となる福澤諭吉ですが、学問のススメでは「お金」についてもその考えを述べています。

 

自身の生計は実態のない相対的な価値、つまりは「妄想」によって左右されている。

このような妄想的世渡りに心を労し、身体を疲れさせ、一千円の年収も百円の月給も跡形もなく使い果たした上、不幸にも財産か職を失えば、無気力で間抜けのようになってしまう。

財産は一身独立のための基礎になる、と言って心身ともに苦労しながら、その財産を使うに際してはかってその財産に支配されて、独立の精神を完全に失ってしまうとは、独立を求める手段によって独立そのものを失ったと言える。

金の使い方を工夫し、金を制して金に制されず、精神の独立を少しでも損なうことがないようにしなくてはいけない。

 

後の日本において諭吉自身がその「妄想」の主人公になるとは本人には知る良しもなかったと思いますが、お金の実態について的確に言い当てていると思います。

また、本書には新紙幣の千円の顔となる「北里柴三郎」と福澤諭吉の縁についても書かれています。

北里柴三郎の伝記によると、ドイツ留学から帰国した際に、福澤の援助を期待して面会に行く前に当時ベストセラーだった「学問のススメ」を奥さんに薦められ読んで、その一説を福澤の前で全部暗唱したところ、福澤の信頼を得ることができました。伝染病研究に大きな力を持ちつつも日本で働く場所のなかった北里に、諭吉が所有する土地を貸して研究所を作らせました。つまり諭吉の学問のススメと援助がなければ北里によるペスト菌の発見や、破傷風の治療法など感染症治療の功績はなかったかもしれません。諭吉の没後には諭吉による長年の多大なる恩義に報いるため、慶應義塾大学医学部を創設し、初代医学部長、付属病院長となりました。そして、終生無給で慶應義塾医学部の発展に尽力したとされます。

諭吉の見返りを求めない日本全体を考えた大きな決断が北里へと受け継がれ、そして双方ともに日本国の発展に大きく寄与したのです。不思議な縁で結ばれた二人は紙幣に選ばれるべく選ばれたのでした。

 

まとめ

 

二回にわたって「学問のススメ」についてまとめてきました。

読んでいても現代のビジネス書として書かれたような不思議な感覚に陥り、とても明治の時代に書かれたとは思えない内容でした。そのことはつまり明治の時代も現代も根本的な日本人としての気質や問題点は変わっていないということであり、変わることなく現代の私達にも「学問のススメ」が必要ということだと思います。

 

学問で重要なのはそれを実際に生かすことである。実際に生かせない学問は、学問でないのに等しい。

学問本来の趣旨は、ただの読書にあるのではない。精神の働きにある。物事をよく「観察」して、物事の道理を「推理」して、自分の意見を立てることである。

人間の見識、品格を高めるためには物事の様子を比較して、上を目指し、決して自己満足しないようにすることである。

 

100ドル紙幣のベンジャミン・フランクリンは1928年から採用されており、91年間も100ドル紙幣で有り続けています。さすがアメリカ建国の父です。30年もの間、日本の紙幣の象徴であった人物もまた、それにふさわしい人物であったことを改めて学ぶことができました。

次回は新紙幣の象徴「渋沢栄一」の「論語と算盤」についてまとめてみようと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

参考図書:

福澤諭吉 著 齋藤 孝 現代語訳「学問のすすめ」

 

 

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Comments from NEMber
やってみよう
2019-07-14 21:52:29ID:132795

本当、先見の明ですね!「学問のススメ」ってタイトルからだと、
こういうことが書かれてるって予想できないです。

7zoesan
2019-07-13 22:27:51ID:132583

>>YUTO::さん
それも読んでみたいですね!機会があればまとめてみます!

YUTO
2019-07-13 22:13:20ID:132579

いつかは、福翁自伝のレポートも時間があれば、楽しみにしています。

NEMber who posted this article

北海道で理学療法士兼スポーツトレーナーとして活動しています。
これまでの臨床経験から得た気づきや学びに関すること、
日々の読書の備忘録など、徒然なるままに健康と幸福と自身の人生観についてアウトプットしていきたいと思います。
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