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「AI vs 教科書が読めない子どもたち」の話

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2019-04-11 21:13:47
「AI vs 教科書が読めない子どもたち」の話

タイトルの本、こちらの本は昨年のとっても話題になったので読んだ方も多いかと思いますが、昨年から図書館で予約していてやっと届きました。

著者の新井紀子さんは国立情報学研究所の教授であり、数学者としてAI研究の最前線にいる方です。

著者のプロジェクトで最も有名なのは「東ロボくん」で、人工知能をつかって東大に合格させようというプロジェクトです。本書は東大ロボくんの研究からわかったAIの弱点から今後の日本の学生教育のあり方を考察しています。

 

東大ロボット研究の目的

 

研究が始まった当初、ロボットが東大に入れることができるなど研究者は誰も思っていなかったと言います、そして現在でもそれは変わっておらず、そもそもの研究の目的はAIにはどこまでのことができるようになって、どうしてもできないことは何かを解明することでした。

それを明らかにすることでAI時代だ到来したときに、人間が仕事を奪われないようにするためには人間はどのような能力を持たなければいけないのかも自ずと明らかになる、それが東大ロボット研究の目的だったのです。

 

東大ロボット研究が明らかにしたAIの弱点

 

基本的にコンピューターがしているのは計算です。つまり人間の知的活動や自然をすべて四則演算で表現するか、表現できていると私たちが感じる程度に近づけることが人工知能のゴールになります。

しかしながら、人間の知能を科学的に観察する方法がそもそもなく、あったとしても倫理的にすることができません。

もう一つ可能性があるとしたら、原理をすっ飛ばして結果を得る方法ですが、これは飛行機が飛んでいる原理は解明できてないけど飛行機ができちゃったという方法と同様であり、可能性は0ではないですが、人間より高度に知能が発達した知的生命体が銀河系に存在することを否定できないのと一緒ぐらいのことだと著者は言います。

つまりは計算や統計学手法で明らかにできないことはAIにも理解ができないということになります。

それでも東ロボくんの偏差値は57.1まで伸び、有名私大には合格できるレベルまでには到達しています。

私たち人間が問題を解くのとはまったく違ったアプローチですが、数年でここまで成長することができました。

しかしながら、ここらへんが限界というのが著者の見解です。

5教科で特に足を引っ張っているのがやはり英語と国語の文系科目でした。

AIは普通の常識や文章の意味を理解しているのではなく、あくまで統計に基づいた計算をしているだけなので、数学(論理、確率、統計)では文脈が持つ意味を表現することが難しいのです。

 

それよりもまずい日本の学生

 

以上の理由により、著者は現行のAI研究の延長では「シンギュラリティ:技術的特異点」つまり、AIがAIを創り出して人間の知的能力を超える日は来ないと断言しています。

それでは、私たちはAIによって仕事を奪われることはないのでしょうか?

それについて著者は、AIにできない仕事が人間にできるか?、AIが苦手なことをできる人間がどれぐらいいるのか?という問いに対して全国25000人の基礎的読解力の大規模な調査を実施しています。

その結果、日本の中高生の3人に1人が簡単な文章が読めないということがわかったのです。

例題は本にもいくつか参照されていますので、詳しくは本書を参考にしてもらいたいのですが、正直小学生でもわかるんじゃないの?っていう問題でも3人に1人は問題の意味がわかっていないのです。

しかも、AIが苦手とする同義文判定や推定、イメージ同定に至っては日本の学生の正答率も50%以下と目を覆いたくなるような結果が出ていました。これは教科書レベルの記述やテストの問題の意味を半分以上の学生が理解していないということになります。もう一つ、明らかになったのはこの読解力テストと偏差値にはかなり高い相関があり、問題を理解する読解力があるかが偏差値の高い高校へ進学するための必須条件となります。

多くは中学受験で読解力(問題を読めるかどうか)がふるいに掛けられてますので、中高一貫の教育内容ではなく、旧帝大と呼ばれる難関校に受験するための読解力が12歳までに身についているということが東大入る可能性を高めていると著者は言います。

ですので、多くの学生は現状のAIの能力を上回る能力を身につけておらず、AIが苦手とすることをも苦手としているため、同じ条件であれば人件費や健康状態に左右されず、時間的制約のないAIに分があるのは当然であり、多くの人材がAIに仕事を奪われる未来が想像されます。

 

読解力を身につけるには?

 

これについても著者らは生活習慣や読書週間、学習習慣、スマートフォンの使用時間など事細かくその相関性を調査していますが残念ながらどの結果も目立った相関はみられず、こうすれば読解力が上がる、下がるといった因子は発見されていません。しかしながらこの結果を重く見た先生方の取り組みによって読解力が劇的に変化した事例も報告されており、読解力を身につけることができる可能性に光明がさしてきました。

また、著者は読書数は読解力に影響しなかったが、同じ物語や本を何回も読むといった精読や深読にヒントがあるのではないかとも考察しています。

私も小学生の娘を持つ親として娘に読解力をつけさせるためにはどのような方法が良いか、思案しているところですが、

娘は幸いなことに1-2年生という学習においてもっとも大切な時期に素晴らしい担任の先生に出会うことができました。

その先生はもともと国語が好きだったそうですが、この本を読んで日本の国語に対する危機感を覚え、自分の今までの経験も踏まえながら一つの課題を娘たちのクラスに与えました。

それは、毎日、日記をつけることでした。他のクラスはやっていません。日々の学校内の出来事や感じたことを書かせて、それをすべて先生が目を通してコメントをつけてくれます。クラスの人数は24名でしたがそれを毎日やるのは簡単なことではないと思います。娘たちも宿題の他に毎日日記をつけるのですから非常に大変だったと思います。しかしながら2年間やり抜いた結果、国語が好きになり、本を読むことも、そして自分で物語を書くこともするようになりました。

その他にも空き時間があれば読み聞かせをしたり、自分のオリジナルの紙芝居をつくってみたり、様々な工夫で文章に触れされてくれていました。本当にいい先生に出会えて娘たちは幸せだと思います。残念ながら先生はこの春で定年を迎え、退職されてしましましたが、この日記の習慣は親である私が引き継いで、娘が提出する限り添削してあげようと思っています。そしていつか物愚者さんのあの難解な記事をさらっと読めるぐらいになってくれれば読解力がついたと言えるかもしれません。あの文章をAIに読ませたら煙吹き出してショートするに違いありません。

 

まとめ

 

AIはあくまで計算機であり論理、統計、確率の成り立たないところでは意味を理解できない。

AIは生産効率を上げることやコストを下げることを得意とするが、新しいサービスを生み出したり、問題解決はできない。

AIにできない仕事をできる人間が非常に少ない可能性がある。

幼少期から読解力やコミュニケーション能力といったAIに難解な能力を身に着けておくことが大切である。

物愚者さんの文章は東大の問題より難しい。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

紹介図書

新井 紀子 著「AI vs 教科書が読めない子どもたち」

 

Comment
7zoesan
7zoesan
2019-04-17 20:49:44ID:105196

>>Yonnsann::さん
コメントありがとうございます!!国語を教える方なんですね、記事からも本好きと国語好きがわかりました。娘は初学に本当にいい先生に出会ったと思います。今は先生から引き継いで、日記は継続して、私が感想を書くようにしています。娘のモチベーションが続く限りやってみようと思います。このあとちょっとYonnsannさんの記事をご紹介しながら考えたことまとめようと思いますのでそちらもぜひ感想いただけたらと思います。

hukushima
hukushima
2019-04-17 20:43:50ID:105195

面白く読ませていただきました。

数年国語科担当の塾講師をしていましたが、中高生の読解力の低下は本当に危険だと思います。学習指導要領の改訂も意訳したら国語科は「教科書程度は最低限理解できるようにする」といった感じで、現代の中高生は教科書すらまともに読めないと認識されています。

指示語が理解出来ない、問題文が何を言っているのかわからないといった様子の子は普通にいます。そしてその子たちに共通しているのが、アウトプットの足りなさだと思いました。今日あった出来事を聞いても、普段そんな話をしないから説明がとっちらかって何を言ってるのか分からないんですよね。
小学校の先生のお話がありましたが、その方は大変素晴らしいと思います。今日あったことを思い出し、整理し、文章としてアウトプットすることは読解力向上にも効果があると思われます。

AIと差別化をはかれる領域は国語に隠されていると思うので娘さんには是非国語を楽しく沢山勉強してもらいたいですね😌

7zoesan
7zoesan
2019-04-12 18:36:30ID:101521

>>クイックネム::さん
おしゃるとおり、統計で動いている以上外れ値がかなり下がるのですよね、あとは誰かが意図的に間違った答えを入力すればそれも残ってしまうということもあるようです。
今後、どのようなアプローチをとるのかは楽しみでもあり、人類にとっては驚異でもあります。

7zoesan
7zoesan
2019-04-12 18:33:34ID:101517

>>物愚者::さん
脳神経回路が電気信号である以上、計算できる可能性はゼロではないですよね、ただしあの複雑な回路をすべてモニターして観察することが果たしてできるのか、わかりませんね。映画面白そうです!

クイックネム
クイックネム
2019-04-12 15:20:42ID:101427

今のAIアプローチの延長にはシンギュラリティは無いかもしれないですね。

今は統計重視なので、いわゆる外れ値は重みを下げるような仕組みになっていると思うのですが、
これを逆にして、統計での外れ値を評価する仕組みが組み込めたら、違う形のAIができるかもしれないな、とは思っています。
人間だと、いわゆる奇人変人が凄いブレイクスルーを起こしたりするので。

物愚者
物愚者
2019-04-12 14:33:39ID:101420

先日エクスマキナという映画を観ました。

ネタバレにならない範囲で考察の割れを示すと
検索エンジンのデータを脳神経回路を模したハードに詰め込んだAIが示した一連の「人間味溢れる行動」に意識はあるのか、ないのかというもんで。

ない派はどれだけ高度に高速な演算を行なってもそこから意識は生じないと言い、ある派はそもそも人間側に意識を成り立たせる上でそれ以外の何かしらの要素が存在するという発想自体を疑うっていう。

物愚者
物愚者
2019-04-12 14:26:16ID:101419

>>YUTO::さん

ブリュリュ

7zoesan
7zoesan
2019-04-12 12:42:28ID:101362

>>tom::さん
ホリエモンとジョブズは未来予測は変数が多すぎて難しいから、とりあえずたくさん色々やっておけ、その点がいつか繋がると言ってました。

7zoesan
7zoesan
2019-04-12 12:41:04ID:101361

>>やってみよう::さん
1に国語、2に国語、3.4は遊んで5に国語という言葉もあるようです笑

tom
tom
2019-04-12 12:08:37ID:101334

読解力よりも僕は未来を予想でき行動できる人がのこるとおもってまふ☺️

この記事を書いた人
北海道で理学療法士兼スポーツトレーナーとして活動しています。 これまでの臨床経験から得た気づきや学びに関すること、 日々の読書の備忘録など、徒然なるままに健康と幸福と自身の人生観についてアウトプットしていきたいと思います。 NEMはあまり関係ないことが多く、申し訳ありません!! ツイッターもはじめましたので、よかったらフォローお願いいたします。