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【古事記入門】その38 神功皇后3

nem7.20xem (4) 261 9 1

新羅と百済を征伐し、日本へ帰ってきた神功皇后。

帰国すると無事に次期天皇となるホムダワケも生まれますが、大和ではこの継承劇に納得のいかない王子たちが謀反を起こします。

 

ホムダワケの誕生

神のお告げによって皇位継承者と指名されていた神功皇后のお腹の御子ですが、朝鮮征伐からの帰国を控えて、いよいよ生まれようとします。

 

かれその政いまだ竟へざる間に、妊ませるが、産れまさむとしつ。

すなはち御腹を鎭(いは)ひたまはむとして、石を取らして、御裳の腰に纏かして、筑紫の國に渡りましてぞ、その御子は生れましつる。

かれその御子の生れましし地に名づけて、宇美といふ。またその御裳に纏かしし石は、筑紫の國の伊斗いとの村にあり。

 

朝鮮征伐の事業が終わらないうちに、御子が生まれそうになってしまいます。

 

そこで皇后は、衣服の腰のあたりに石をはさみこんで、お腹を落ち着けようとしました。
すると出産は遅れ、無事に筑紫の国に帰ってきてから、御子ホムダワケ(=応神天皇)は生まれました。

 

御子が生まれた土地は、これにちなんでウミ(現在の宇美町)と呼ばれるようになり、このときの石は、糸島市の鎮懐石八幡宮に祀られています。

 

 

香坂王、忍熊王の反乱

さて、前々回でも触れましたが、仲哀天皇には生まれたばかりのホムダワケの他にも、香坂王、忍熊王という御子がいました。

 

 

彼らにしてみれば、自分たちの預かり知らぬ九州の地で仲哀天皇は死に、神のお告げだか何か知らないが、神功皇后は自分の子を勝手に次期天皇だと吹聴しているわけで、こりゃ許せません。

 

しかし神功皇后のほうも、2人の不穏な動きを察知して、手を打ちます。

 

ここに息長帶日賣の命、倭に還り上ります時に人の心疑はしきに因りて、喪船を一つ具へて、御子をその喪船に載せまつりて、まづ「御子は既に崩りましぬ」と言ひ漏らさしめたまひき。

 

まず神功皇后は「御子は死んでしまった」という偽の噂を流し、葬送用の船に御子ホムダワケを乗せて帰路に就きます。

 

これを聞いた香坂王、忍熊王は、武装していない喪船を襲い、神功皇后をも討ち取ろうと考えます。

 

かくして上りいでましし時に、香坂の王忍熊の王聞きて、待ち取らむと思ほして、斗賀野(とがの)に進み出でて、祈狩(うけひがり)したまひき。

ここに香坂の王、歴木(くぬぎ)に騰りいまして見たまふに、大きなる怒り猪出でて、その歴木を掘りて、すなはちその香坂の王を咋ひ食はみつ。

その弟忍熊の王、その態しわざを畏かしこまずして、軍を興し、待ち向ふる時に、喪船に赴て空船を攻めたまはむとす。ここにその喪船より軍を下して戰ひき。

 

まず二人は斗賀野(とがの)なる場所へ祈狩(うけひがり。狩りをして吉凶を占うこと)に出掛けます。
しかし香坂王が木に登ってあたりを伺っていると、怒り狂ったイノシシが現れて木を掘り倒し、香坂王を食い殺してしまいました。

 

これは明らかな凶兆であったにもかかわらず、忍熊王は出陣を強行します。

 

 

まず忍熊王は喪船を攻めますが、これが罠でした。
武装していないと思われた喪船に、実際には兵士が乗っており、両軍は激しい戦闘となります。

 

その時忍熊の王は、難波の吉師部(きしべ)が祖、伊佐比(いさひ)の宿禰を將軍とし、太子の御方には、丸邇(わに)の臣が祖、難波根子建振熊(なにはねこたけふるくま)の命を、將軍としたまひき。

 

忍熊王軍は伊佐比宿禰(いさひのすくね)、神功皇后軍は健振熊(たけふるくま)という人物が大将です。

 

かれ追ひ退そけて山代に到りし時に、還り立ちておのもおのも退かずて相戰ひき。

ここに建振熊の命權(たばか)りて、「息長帶日賣の命は、既に崩りましぬ。かれ、更に戰ふべくもあらず」といはしめて、すなはち弓絃を絶ちて、欺りて歸服(まつろ)ひぬ。

 

健振熊は山代の国まで攻め上がりますが、そこで伊佐比宿禰軍も後退をやめ、戦線は膠着します。

 

そこで健振熊は一計を案じ
「神功皇后は戦死してしまった。もう戦う必要もない」
と言って、持っていた弓の弦を切って、降伏します。

 

ここにその將軍既に詐りを信けて、弓を弭(はづ)し、兵を藏めつ。

ここに頂髮の中より設けの弦を採り出で更に張りて追ひ撃つ。

 

伊佐比宿禰は降伏を受け入れて、自分も武器を置き、兵士にも武装を解除させます。

 

すると健振熊の軍は、髪の中に隠していた弓の弦を張り直して、ふたたび攻撃を始めます。

 

ここに追ひ迫め敗りて、沙沙那美(ささなみ)に出でて、悉にその軍を斬りつ。ここにその忍熊の王、伊佐比の宿禰と共に追ひ迫めらえて、船に乘り、海に浮きて、歌よみして曰ひしく、

いざ吾君(あぎ)
振熊が 痛手負はずは
鳰鳥(にほどり)の 淡海の海に
潛(かづ)きせなわ

と歌ひて、すなはち海に入りて共に死にき。

 

ついに忍熊王と伊佐比宿禰は琵琶湖のほとりに追い詰められます。
二人は船に乗って湖にこぎ出すと、

さあ我が君よ
振熊などにやられるくらいなら
水鳥のように、淡海の水に
潜ってしまいましょう

と歌をうたい、湖に身を投げて死んでしまいました。

 

 

こうして不満分子も早々に潰すことに成功し、

  • 皇太子ホムダワケ
  • 摂政:神功皇后
  • 大臣:建内宿禰

という政権が確立します。

 

 

しかし、ヤマトタケルなんかも割とそうでしたが、意外と官軍の側が卑怯な手を使って勝ちますよね。

この時代には「正々堂々」みたいな概念は、まだ無かったんでしょうか。

 

一方で忍熊王・伊佐比宿禰の辞世の歌では「敗けた・死ぬ」という言い方はしていなくて、
「あんな卑怯者にやられて死ねるかい!
しかし、こんなインチキがまかり通る世の中、つくづくアホらしいわー。海の底のほうがいくらかマシ。ほなお先に」

とでも言いたげな気持ちが伝わってくるようで、けっこう好きな歌です。

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Comments from NEMber
珈琲ねむりや
2019-04-18 10:26:36ID:105578

>>やそ::さん
例えば今回のところだと伊佐比宿禰は難波の吉師部の先祖、建振熊は丸邇臣の先祖ってバッチリ書いてますし、
このシリーズでは煩雑になるのでけっこう省略してますけど、原文読んでるとご先祖様だらけなんで(笑)、デタラメ書いたら「うちに伝わってる話と違うんだけど」っていうクレームはすぐ来ただろうなとは思います。

やそ
2019-04-18 08:08:35ID:105518

まだまだ神話が昔話として語り続けられていた時代に、全くの嘘はかけなかった。とかそういうことなのかしら。
数百年前、今の時代で言えば戦国時代の話とか、それくらい前の話ですものね。そこから続く家々は普通にあったりしたのでしょうし。

物愚者
2019-04-17 18:38:06ID:105096

>>珈琲ねむりや::さん

結構政治的ですね。

一神教の場合はあくまで一つの世界観に統一するかと思いますが、そうできなかった所産とも見られるんでしょうか。

珈琲ねむりや
2019-04-17 17:32:34ID:105076

>>物愚者::さん
僕の見方は、天皇家の権威を示そうとはしてるけど、各方面に気を遣う必要はあるし、もともと各地・各豪族に伝わる伝承を無視して創作するわけにもいかず、あんな形になったのかなと。。。

むしろ一神教的世界観ではその辺どう折り合いつけてるのか気になります。

物愚者
2019-04-17 15:56:16ID:105063

>>珈琲ねむりや::さん

おそらく、いわゆる正義の観点は無いと思うんですよね。
例えば、これが聖書なら大国主のエピソードとかあの様な形で描かれてないんじゃないかなぁと。
単に、高天原に背く悪人として登場させられそうで。

この辺が古事記や日本書記は天皇の権威を示すための書物であるって見方が好きになれない理由です笑

珈琲ねむりや
2019-04-17 15:48:49ID:105062

>>物愚者::さん
敵役ではタケミナカタやクマソタケルのキャラはかなり好きです!

むしろ彼らをやっつけた政権側が横暴で引くんですが(笑)
「正義」っていう考え方は、あったんでしょうかね? 「神の意志」があったのは分かるんですが。

珈琲ねむりや
2019-04-17 15:42:11ID:105059

>>kassy_nara::さん
「卑怯」とか「正々堂々」みたいな価値観が出てきたのはいつ頃からなんでしょうね? やっぱ武士が台頭してきたあたりからなんでしょうか。
このへんから登場人物も実在の人っぽくなってくるので、権力闘争がいっそう面白く読めますね。

物愚者
2019-04-17 13:14:10ID:105037

古事記は一神教的な正義の絶対化とか敵方の人格消失がなくて面白いっすよね

kassy_nara
2019-04-17 12:54:40ID:105031

通常官軍(勝った方)側は都合よく脚色するものですが、卑怯な手段が当たり前のように書いてありますよねwww
何時の時代も権力闘争はつきものですね!

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