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科学哲学への招待 を読んで 〜天動説と地動説の相対的真理性〜

nem8.05xem (5) 212 17 2

「アリストテレスの世界観は誤りである。」

 

今はそうなっております。

 

ところが、当時の人々はそれを大真面目に信じていた。

 

これは昔の人間がバカだったからなのでしょうか?

 

いや違う。

 

あれはあれで、当時の観測結果を元にして立派に合理的な説明をしていたのです。

 

そう、天動説は「正しかった」。

 

しかし、今を生きる我々の多くは、天動説が棄却されて地動説が支配的な地位を得るまでの道のりについて興味を示さない。

 

にも関わらず、天動説に対する否定的な意味合いだけは強く抱いている。

 

天動説をあたかも奇人が唱えた妄想のように捉え、それを疑うことをしなかった過去の人々は皆白痴であったかのように思っています。

 

そのような方は「地動説」を信仰している。

 

その向き合い方について、彼が蔑んでいる「天動説を信じていた人々」と本質的に差があるのでしょうか?

 

いや、ない。

 

故に、バカにするのは不義というものであります。

 

トーマスクーンという人はそこに気づいてしまったのです。

 

彼は物理学を専攻しておりました。

テキストを観ても講義を聞いても、そこでは当然、現代物理の理論が「正しいもの」として扱われている。

 

しかしその後、科学史に関する研究に手を出した際に出会ってしまったのです。

 

アリストテレスの自然学と。

 

なんじゃこりゃ。

間違いだらけだ。

こんなのを受け入れてたとか正気の沙汰じゃない。

 

いや待てよ?

我々ももしかしたらそうなのかもしれない。

 

現状支持されている諸理論は今のところ「正しい」が、今後も「正しい」かはわからない。

しかも、支配的な位置に立つ理論が入れ替わる際、新理論と旧理論の間には互換性すら保証されないんじゃないだろうか?

 

こうして、彼は「パラダイム論」というものを唱えました。

 

ニュートンが提示した世界観とアインシュタインが提示した世界観というのは根本的に別物であって、どちらかの視点が本質的に真であるとは言えないと同時に、個別の枠組みの範疇においてはそれぞれに真なる答えがあるというもの。

 

とすると、当然アリストテレスの世界観もその中においては妥当性が見出される。

 

なお、ここにおいて反証主義の科学観というのは彼が言う移行を「進歩」と見做すので相容れない。

 

あくまでも、アリストテレスの説よりも後に現れた説の方が正確で、真理への距離が近く、優れていると考えます。

 

さて、私自身はクーンを好きではあるのですが、例えば、自然科学領域の基礎の基礎に関して無闇矢鱈にパラダイム論を振りかざすのは賢明ではないように思います。

 

さすがに、水素原子と呼ばれている対象について今現在明らかになっている知見が完全に覆って全く互換性を欠いた新たな概念や言語によって表記されるようになるとは考えづらいし、天動説が支配的な規範の座に返り咲くとも思えない。

 

ですから、本記事のタイトルを鵜呑みにするのはやめましょう。

 

しかし、人文社会領域のように仮説的な構成概念をあたかも実体を持った対象として扱いがちな領域においてはかなり説得力がありますよね。

 

「うつ」とか「愛国心」とか「金融リスク」とか「機能不全家族」とか、こういうものは「りんご」と違って実体が無いので、その時々の流行りによって定義がコロコロ変わりますので。

 

また、自然科学とされているものでも、あり方が流行りによって強く左右される領域はあります。

例えば、人工知能や神経科学、薬理学などはその代表的な例かと。

産業と強く結びついている点が味噌ですね。

 

このように、極論は時と場合を弁えて運用する場合に限り我々に偉大な啓示を授けます。

 

しかし、常々言うように極論には魔力があるのでしょうね。

 

アフォーダンスという概念があります。

 

棒は我々に振り回すという行為をとる可能性を提供する。

ドアノブは掴んで捻ることを提供する。

 

極論はそれを濫用するように我々をアフォードするのでしょうか?

 

案の定、その後クーンの影響を受けた者たちによるパラダイム論とそこから派生した主張の濫用が始まるのです。

 

「数学や論理学、自然科学を含め全ての科学理論は社会的構成物であり、それらは社会、経済、時代といった背景によって正しいと認識されているに過ぎない。」

 

これに対して、科学は社会的な背景から全く独立した普遍的妥当性を持つ知識体系であるという対岸の極論を誇示する方が相対論を説く層が愛読する雑誌に向けてニセの論文を提出しました。

 

これ、査読通って掲載されてしまったんですよね。

 

これをきっかけに、科学を信奉する方々はここぞとばかりに

 

「こいつらこんな基礎的なことも理解できてない。

だから、相対論者の主張は全部迷信だよ。

科学の勝利だ。」

 

と、煽りました。

 

これが世に言うソーカル事件です。

 

しかし、これも論理的に前後で繋がっていないんですよね。

相対論を主張する側がニセ論文であることを見抜けなかったことが科学の独立性と真理性自体を保証する根拠にはならないので。

 

口論になった時に、言い間違いについての揚げ足を取って「だから俺は正しい。」と主張する感じでしょうか。

 

そういえば、エドワードウィッテンという物理学者もクーンを否定するために似たようなことを言っておりました。

 

「クーンも具合が悪くなったら薬を飲んでたはずだろ?

ほら、彼は既に負けを認めていたのさ。」

 

なんだかなぁ。

 

私も風邪を引いたら薬を飲みますし、眠い時にはカフェインをキメますが、その行為に至るまでに成分の薬理作用に関する知見を全肯定する過程を経ているわけではないし、薬理学の再現性が低いということを考えると心配にもなる。

 

それでも、一応は正しいと信じて服用するわけです。

 

根本的な勝ち負けってのは違うかなぁ。

 

閑話休題、極論同士のぶつかり合いというのは次第に手段を問わず相手を言い負かすことが目的となるので、やはり望ましい結果は齎さないのですね。

この一件も双方共に着地点を見失い、すれ違いを強める形に終わりました。

 

また、パラダイムという用語自体が本来の意味から離れて広く濫用されるようにもなってしまいましたね。

 

クーン自身は、ある時代において共通のパラダイムに基づいて数々の研究や実践が行われることを肯定的に捉えていたのです。

 

「パズルを解く」とか「モップ掛け」という表現でそれを示したのは失敗だったと後年述べたらしいのですが、本人としては知見の客観的な連続性や互換性の存在を否定しつつも、その枠組みの中における活動自体に関しては確定した真理を見つける行為でないからこそ「創造的で人間味あふれる偉大な営み」だと評価しておりました。

 

しかし、パラダイムという用語が一般的な言葉として広まった後、単純な否定的意味ばかりが宿るようになってしまった。

 

「固定観念に基づく凝り固まった視点から抜け出すため、早々にパラダイムシフトすべきである。」

 

といった用法がしっくりきてしまいますよね。

 

彼が科学的な概念の共約のみならず、最終的に他者との言語による意思疎通にすら不可能性を強く見出した裡には「パラダイム」が濫用された事実もあったのでしょうか?

 

人は無責任なのですね。

 

無責任だからパラダイムの原義など知らなくても平気で使おうとするし、天動説も地動説も「信仰」されるわけです。

 

こうなると、体系や理論自体は進歩しており、客観的な妥当性を持っていると見るのが妥当な領域だろうと、そこに研究者やスポンサー、そして技術を享受する人々といった肉の存在を付与した場合には疑わしくなってしまう。

 

更に言えば、そのレベルまで妥当性を確信できる領域というのは実は思った以上に少ないでしょう?

 

本書において、現代は組織化された無責任の体制により運営されていると述べられております。

 

個人の誤った行為に関しては個人に責任が求められる。

法人でもまだ責任追求することが可能である。

 

しかし、科学的な結論に誤りがあったせいで発生した災害の責任は本来どこに帰するべきなのでしょう?

 

ところで、原発事故を「国や東京電力のせい」にして終わらせるのはあまりよろしくないかと思います。

 

というのも、純粋に社会的な要因のみに還元すると、恣意的な介入さえなければあくまで観察結果や理論自体は常に客観的で神聖不可侵なものである、と捉えられてしまうからです。

 

ソーカル事件における極端な相対論者も陥った罠ですね。

これは墓穴を掘っているように見えるのです。

「客観性の規範さえ守られていればあらゆる科学的知見は正しい。」という認識に繋がって、かえって疑えなくなる。

 

相対論において、社会的な要因によって歪むというのはあくまでも一部かと。

 

そもそも本来、科学は全て蓋然性に基づく営みであって絶対のものではないという認識を持つべきなんですよね。

 

そういう意味で、原発事故後に「有識者を信用できなくなった」と答えている人は個人的には無責任だと思います。

 

そりゃ「信じてた」アンタの方が間違ってるのよと。

 

しかし、全員にそれを知ることを求めるのはやはり酷ですね。

 

早い話が、天動説が広く支持されていた時代に生まれていたらなんの疑いもなくそれを自明の真実だと思っていたような気質の人間が大勢おり、彼らは同じように現代科学を真理として信仰している。

 

外野のみならず、現場の研究者や技術者にもそういう人がそれなりにいらっしゃることでしょう。

 

おそらく、この状態はまず変わらないと思います。

 

義務教育のカリキュラムに「科学に関する思想的背景」のような単元を入れれば解決するとか、そういう話ではない。

 

その上で、現実問題として「真理に反する」事故が起きて巨大なリスクを被っている今、全体としてどこにどうやって適当な落とし所を見出すのがベターなのでしょうか?

 

本書においては市民など非専門家参画型の議論を提唱しておりましたが、そういう方々は問題をかき乱すだけかき乱して責任を拒むのが常なので個人的にあまり望ましいとは思えない...

 

 

https://nemlog.nem.social/blog/20821

YUTO氏へ、勧めていただきありがとうございました。

 

https://www.amazon.co.jp/科学哲学への招待-ちくま学芸文庫-野家-啓一/dp/4480095756

 

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Comments from NEMber
物愚者
2019-04-24 17:43:08ID:109294

>>やそ::さん

ギリシャとかイスラムはそうだったかもしれないっすよね。
なお、中世ヨーロッパ...

やそ
2019-04-24 17:41:23ID:109293

>>物愚者::さん
宗教は絶対だ、地動説なんて理論的にはあり得るかもしれないが、そんなことはあり得ない、こんなに観測もして確かめて複雑な計算と矛盾は生じないのだから。と信じていた人の気持ちもこんな感じだったのでしょうか。

物愚者
2019-04-24 14:15:07ID:109255

>>YUTO::さん

不届き者感がありまして、はい。。。

YUTO
2019-04-24 14:05:39ID:109250

>>物愚者::さん
別に気にはしていないので、自由にしていいですよ!

物愚者
2019-04-24 13:51:42ID:109239

>>やそ::さん

>科学というモノがあったんだ。今も信じている人はいるな。
あり得るとは思うんですが、とはいえやっぱり覆るイメージが湧かないんですよね〜。

何かが流れ込んで本流から逸れるのはあるかも。

物愚者
2019-04-24 13:48:11ID:109238

>>YUTO::さん

やっぱなんか悪い気がしたんでやめときますm(_ _)m
すいません。

やそ
2019-04-24 07:44:10ID:109081

科学というモノがあったんだ。今も信じている人はいるな。
真理もついているけど、そんなものをこのご時世に信じてるのかい?
○○は科学から生まれたんだ。もはや○○は科学とは別物になったのさ。もともとは科学を更に突き詰めようとしていただけなんだけどね。

なーんて未来で言われていたり。

地動説と天動説の関係も
宗教と科学の関係性も
万世一系という考え方と似ている気がします。傍流だと言われているものが、次の世代には本流になる。本流だったものが、次の世界では傍流だと言われるようになる。
でも辿っていけば同じところで出会う。

YUTO
2019-04-24 01:57:03ID:109033

>>物愚者::さん
タグをつけるかどうかは自分で考えてください。
こちらからは、何も言いません。

物愚者
2019-04-24 00:04:20ID:108998

>>YUTO::さん

(ところで、これにサイエンス同好会のタグをつけてもよろしいでしょうか?...)

物愚者
2019-04-23 23:23:49ID:108963

>>YUTO::さん

機会を提供してほんとありがとうございます。
個人的に、抜け落ちてたところの補足にもなりました。

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