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いつか行きつく、あの丘に

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いつか行きつく、あの丘に

 

毎朝、出勤で電車に揺られて人ならば、ハゲ頭に目が行くことがあると思う。

若くてハゲている薄らハゲもいるし、兵糧攻めでも受けたのか? っていうようなバーコードハゲもいる。ボリュームがあるチリチリ頭に、トップだけが平たくなった鳥の巣スタイルもいる。

 

子どものときは何の気もなしに、「なんじゃいこのハゲ!」と思っていた気もする。

 

しかし現実はとても残酷である。僕らがいくら抵抗しようと、時間は等しく流れてゆくのだ。

まさに、低きに流れる水のように。


お前、自分がまだハゲないと思っているのか?


安心してほしい。大なり小なりみんなハゲる。ハゲるのだ。

 

命の尊さ

 

小学生のとき、植物は生きているという勉強をしたと思う。

そう、植物は生きているのだ。

 

仮にだけれど、

 

水を糧とし、光合成を行い、成長する。枯れたり増えたりする。

人とすると、ご飯を食べて、活動して、成長していく。死んだり、子孫を増やしたりする。

 

そう捉えるとなんとなく、「生きている」という認識に近く感じると思う。


だけれど、植物は簡単に死んでしまう。

能動的に大きな動きができないとか、哺乳類から見たならば、といった条件はあるかもしれないけれど、植物は簡単に死んでしまう。

 

「雑草は強いよ、抜いても生えてくるんだ」

 

もちろん、そういう話はある。一軒家とかに住んでいると、どうやってここに発生したのか? と思うほど雑草が生えてくる。抜いても抜いても生えてくる。

であれるとしてもそれは、「何の草かわからない」雑草なだけである。同様に、「どこの馬の骨かもわからない」やつもいくらでも現れる。


つまり、個体でも群体でもいいが、「それは何なのか?」という認識が足りなかったことによる「またなんか、草が生えてるよぉ」というだけの話。

 

自分の手で植えた「チューリップ」は抜いたら生えてくるのか?
「戸愚呂兄」は死んでも生き返るのか?

 

そんなことはない。チューリップは抜いたら生えてこないし、戸愚呂兄も死んだら生き返らない。よしんばシェンロンにお願いして生き返ったとしても、それは本当に戸愚呂兄なのか? 哲学的ゾンビ的な何かでないのか? はたまた模造品でないのか?


つまり、一度死んだものは生き返らないのだ。

恐らくこれは、生命の宿命でもある。

 

植物は簡単に死ぬし、そして髪も簡単に死ぬ。


引っこ抜けば毛根が死ぬし、叩けば細胞も死ぬ。物理攻撃がなくとも、ストレスやコレストロールでも死ぬ。

歳を取ればいずれ生える量が減ってくるし、抜ける量は変わらない。

 

もはや、日本の人口ピラミッドすら彷彿とさせる死の国、それがそこらへんに存在する。我々の最も身近な、頭上に存在するのだ。

 

昔、バーテンから「子どもが生まれたときさ、なんだろう。よくわかんないんだけど、世界にごめんなさいって、ありがとうって、そんな不思議な感情が生まれたんだよね。子どもが生まれるってすごいよ」なんて話をされたのだけれど、毛根も同じである。


存在が尊いからこそ、そんな感情になるのだ。


真夏の炎天下、太陽の下で帽子をかぶったまま作業をする。

日が傾き、おもむろに帽子を脱ぐだろう。

帽子の裏側に張り付いた、汗交じりの幼い髪の毛を目にすることもあるかもしれない。

 

考えてみてほしい。果たして、帽子と頭皮の境界線で蒸され続けた幼な毛は、炎天下の車内放置された子どもとどれだけの差があるのか?

 

命は尊い。我々は、その大切さを頭皮から学ぶべきだったのだ。

 

決して、ハゲを見ても笑ってはいけない。そこには脈々と語り継がれるべき、死の歴史があるのだ。

 

対岸の火事

 

  • 我々の日々は戦いである。
  •  

おててつないで、みんなでなかよしごーる、なんてものは幻想であることを、我々おじさんは知っている。

 

その通りで、平等なんてない。

 

我々が還暦を迎える前からもう、ツルツルな奴がいる。ふさふさな奴もいる。

親の頭を思い出すんだ。祖父の頭も思い出せ。そして自分の頭と照らし合わせると、そこには立派な変遷がある。見えてくるはずだ。将来が。未来が。

 

それを対岸の火事として傍観するか。火が回ってからでは遅すぎると対策を始めるか。

さて、ここが分水嶺ではないのだろうか。

 

いやきっと、ここだけでなく、ずっと分水嶺だったのだ。

それに対して僕も、みんなも、ずっと目をつむってじっとやり過ごしていただけなんだ。

 

何もなくなるその前に

 

どうやって毛は抜ける。時間と共に。

植物だろうが、毛だろうが、消費していくのだ。そしていずれ、全てなくなることも視野に入ってくる。

 

減っていくのは仕方ない。ではどうすれば?

ハゲになるか、ハゲに身を任せるか。いっそのこと、太陽拳でも使ってみようか。

 

簡単なことで。

減るより、多くを増やせばいいのだ。

 

僕らがまだハゲていないのであれば、それは抜けていないわけじゃない。

抜けるよりさらに多く、生えているのだ。生まれているのだ。産声を上げているだけなんだ。

 

庭の雑草と頭の毛。

そしてこの国の人口。

 

それらに似ているのは果たして、一体誰の頭皮なのか。

 

愛と憎悪のハゲ

 

僕らは今、ジジイの頭に生きている毛かもしれない。

 

そう考えたら駅で見るハゲ頭にも、ほんの少しだけ愛着が湧かないだろうか。

 

僕らはそのハゲを目の前にして歩いている。けれど、いずれ僕らも何歩か前に進み、そのハゲの位置まで進むのだろう。

そして気づけば、そのハゲを誰かにさらすんだろう。

何故ならば、僕らは、前に向かって生きている。

 

そしていずれ、「なんじゃいこのハゲ!」と言われて、憎しみを覚えることもあるかもしれない。


ハゲたちは愛おしく、そして、憎まれている。

つまり、愛憎の象徴である……それがハゲなのだ。

 

ハゲ

 

まだハゲてない気がするのに、奥さんに「そろそろ歳だから育毛剤でも考えてみたら?」みたいな話を持ち掛けられました。

今ならもう少し、人に優しくできる気がしました。

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Comments from NEMber
和泉
2019-06-22 19:19:26ID:127341

>>仮想ユートピア::さん
ありがとうございます!

心はいつも産毛のようにいたいですね!

仮想ユートピア
2019-06-22 17:52:55ID:127335

ハゲだけでここまで語れるなんて
禿げしいな和泉さんは🤓
楽しく読めました

NEMber who posted this article

湘南のポエマーを目指しているおじさん。

ポケットの中の少ないNEMと共に、未来を見つめたいと思っています。
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