connecting...
Google translation for articles :
2 NEMBER donated to you!!

【読んだ気になれる】太宰治「女生徒」

nem1.70xem (2) 186 2 0

<要約>
少女のなんでもない1日が描かれる。
家族が嫌いだけど愛しい。
友達が可愛いけど嫌になる。
飼い犬に意地悪して優しくする。
生き辛い世の中を憂いてみたりする。
そして布団に潜り、今日も1日が終わる。
少女特有の不安定さと純粋さを瑞々しい文章で描いた一作。

 

 

○考察
「女生徒」は太宰作品の中でも人気のある作品の一つですね。
この作品は太宰の完全なオリジナルではなく、太宰の熱狂的な女性ファンから送られた日記が元になっています。日記に太宰が手を加えて編集したという感じですね。

 

 

・女が女を醜く思う
この作品を読んで思い出したのは、以前テレビ番組で又吉直樹さんが仰っていた「太宰が女性の代弁をすることで妙な説得力を持たせる」という話です。
その番組でもちょうど「女生徒」が取り上げられていたのですが、この作品では女の浅ましさや卑しさなどが語られており少女自身そこに共感して自分を含めた女を醜く思ってしまします。
女性作家であればこういうものも説得力がありますが、男性作家が書くと中々共感が得にくいのではないのかと思います。性別が違うのだから仕方ないですよね。
しかし、太宰が書くと「女が女を醜く思うこと」に妙な説得力が生まれます。
例えば以下の引用。

 

この雑誌にも、「若い女の欠点」という見出しで、いろんな人が書いて在る。読んでいるうちに、自分のことを言われたような気がして恥ずかしい気にもなる。

 

個性の無いこと。深味の無いこと。正しい希望、正しい野心、そんなものから遠く離れている事。つまり、理想の無いこと。批判はあっても、自分の生活に直接むすびつける積極性の無いこと。無反省。本当の自覚、自愛、自重がない。勇気のある行動をしても、そのあらゆる結果について、責任が持てるかどうか。自分の周囲の生活様式には順応し、これを処理することに巧みであるが、自分、ならびに自分の周囲の生活に、正しい強い愛情を持っていない。本当の意味の謙遜がない。独創性にとぼしい。模倣だけだ。人間本来の「愛」の感覚が欠如してしまっている。お上品ぶっていながら、気品がない。そのほか、たくさんのことが書かれている。本当に、読んでいて、はっとすることが多い。決して否定できない。

 

こんなこと言われたら女性は怒り出したっておかしくありません。しかしこの文章には何故かそれも女の一面として確実にあるものと受け止めてしまう不思議な説得力があります。

何故説得力があるのか考えてみたのですが、これは恐らく女性キャラクターに語らせているからだと思います。しかし、ただ普通に女性キャラクターに語らせてもそこから女性とは異なった男性の考えが滲み出てしまい女性の共感は得られません。この手法は太宰の「リアルな少女」を表現するその文章力だからこそ成り立つものと考えられます。
以前取り上げた「愛と美について」ではその技術力が顕著に表れていますね。兄妹のキャラクターそれぞれの特徴を捉えた作中作の語りは非常に見事でした。その技術がこの「女生徒」でも活かされており、更にはただキャラを捉えさせるためではなく、そのキャラの語り自体に説得力を持たせるという「愛と美について」の更に一歩先をいっているのではないかと思います。

 

 

・若者の無個性
先の引用では女性の醜さの共感にとどまらず、続けて「無個性」ということについても言及しています。
無個性については「彼は昔の彼ならず」でも取り上げましたね。確か「彼は昔の彼ならず」から「女生徒」まで5年ほど年月が空いていると思うのですが、「若者の無個性」というこは依然として言われていたようですね。

 

少女は周囲に笑われながらも、自分の意思を貫く自身の親戚に敬意を抱いていると言います。何故なら自分には決してできないことだから。以前は少女も自分と人とが違うと思った時「何故?」と母に問うたりしていましたが、一言投げられ叱られるだけでした。父に同じことを訊いたら微笑むだけでしたが後から母に「あの子は中心から外れている」と言っていたことを知ってしまいます。そのことで少女は自分を閉ざすようになり、周囲に変に思われないためにもいつも笑顔で愛想良く、「良い子」として振る舞うようになります。

 

自分の個性みたいなものを、本当は、こっそり愛しているのだけれども、愛して行きたいとは思うのだけど、それをはっきり自分のものとして体現するのは、おっかないのだ。人々が、よいと思う娘になろうといつも思う。たくさんの人たちが集まったとき、どんなに自分は卑屈になることだろう。口に出したくも無いことを、気持と全然はなれたことを、嘘ついてペチャペチャやっている。そのほうが得だ、得だと思うからなのだ。いやなことだと思う。
早く道徳が一変するときが来ればよいと思う。そうすると、こんな卑屈さも、また自分のためでなく、人の思惑のために毎日をポタポタ生活することも無くなるだろう。

 

この考えは現代でも感じる人が多いのではないでしょうか。自分が人と違うと思いそれを口にすると問題視され自然と自分を殺してしまう。皆んなが皆んなそれに立ち向かう勇気があるわけではなく、システムに入れられたらそのまま押しつぶされてしまう人もいる。この作品は80年近く前の作品となりますが、未だこの問題は解決されていないところが悲しいところですね。もしかすると「若者の無個性」は永久の課題とさえ思われてしまいます。

 

しかしこの作品は決して絶望では終わりません。輝かしい希望の光が見えるわけではありませんが、薄暗い絶望の中、小さなロウソクが灯るようにわずかな光をちらつかせます。

 

明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。けれども、きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいのでしょう。

 

幸福はやって来ませんが訪れる明日を生きることはできる。ここに太宰の「若者」への優しさが感じられ、80年近く経った今でも愛される作品の一つなのではないかと思います。


ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
最後は少女のおやすみなさいで終わります。

 

おやすみなさい。私は、王子さまのいないシンデレラ姫。あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか? もう、ふたたびお目にかかりません。

Why don't you get crypt currency 'nem' by posting your blog article?

nemlog is blog posting service which has donation feature by crypt currency nem.
nemlog was launched to create environment which can be donated nem among NEMbers via blog articles.
Let's get nem by posting good blogs.

Nem prize event is being held frequently, Please join us on this opportunity!

nemlog registration from here
Register
Comments from NEMber
Yonnsann
2019-05-14 13:40:57ID:116732

>>7zoesan::さん
ありがとうございます。
太宰は数多くの文豪の中でも人に読ませる語りの技術が非常に高い人だと思います。

7zoesan
2019-05-14 12:44:35ID:116709

たしかに説得力とすんなり受け入れてしまう文章の妙がありますね。
興味深く拝見させていただきました。

NEMber who posted this article

ネムログ気になったのでライブドアブログからいくつか移行します。

趣味は読書(特に太宰治)、アニメ鑑賞(特に幾原作品)、京都観光。
京都には足繁く通っているので色んな情報を提供できたらと思います。

また、教育実習、学校教員(少しですが)を経験して思ったことも少し書けたら良いと思います。

現在はwebデザインを勉強中。
23413
0