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【古事記入門】その47 女鳥王

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おなじみ仁徳天皇の浮気シリーズ。

今回はちょっとこじれちゃって、大事件になります。

 

女鳥王

 

また天皇、その弟速總別(はやぶさわけ)の王を媒として、庶妹女鳥(めとり)の王を乞ひたまひき。

 

仁徳天皇は、前回のヒロイン八田若郎女の妹、女鳥王にも言い寄るべく、異母弟の速総別を使いに立てます。

 

 

ここに女鳥の王、速總別の王に語りて曰はく

「大后の強(おず)きに因りて、八田の若郎女を治めたまはず。かれ仕へまつらじと思ふ。吾は汝が命の妻にならむ」

といひて、すなはち婚ひましつ。ここを以ちて速總別の王復奏まをさざりき。

 

ところが女鳥王は

「皇后様のヒステリーのせいで、姉の八田若郎女も寵愛を受けることができなかったわ。私も天皇に仕えるとこはできないと思うの。それよりは、あなたの妻になろうと思うのだけれど」

と答えます。

 

彼女は八田若郎女の妹なので、皇后のすごい剣幕にビビって身を引いた様子も間近で見ていたのかもしれません。

結局、女鳥王は速総別と結婚することになり、速総別は天皇への報告もほったらかしにしてしまいました。

 

 

いつまで待っても返事が来ないので、しびれを切らした仁徳天皇は、自ら女鳥王のところへと出掛けていきます。

しかし女鳥王は天皇をキッパリ振って、さらには目の前で速総別に甘えるような歌を口ずさみながらイチャつきます。

 

ひばりは 天に翔ける 高行くや 速總別 鷦鷯(さざき)取らさね

 

ヒバリは空高く飛ぶわね。
速総別さまも空高く駆けめぐって
サザキなんか、取って食っちゃいなさいよぅ

 

この歌に他意があったのか無かったのかは分かりませんが、仁徳天皇の名前は大雀(オオサザキ)。

速総別が謀反を企てていると取られても文句は言えない歌です。

 

天皇この歌を聞かして、軍を興して、殺りたまはむとす。

 

この歌を聞いた天皇は、速総別を誅殺すべく兵を起こします。

 

ここに速總別の王、女鳥の王、共に逃れ退きて、倉椅山(くらはしやま)に騰(あ)がりましき。ここに速總別の王歌ひたまひしく、

梯立ての
倉椅山を
嶮(さが)しみと
岩かきかねて
吾が手取らすも

また歌ひたまひしく、

梯立ての
倉椅山は
嶮しけど
妹と登れば
嶮しくもあらず

 

速総別と女鳥王はいっしょに逃げ出し、倉橋山を上っていきます。
逃げながら速総別はこんな歌をうたいます。

梯子を登るように急な
倉橋山の
険しい道
岩をつかんで登れない君よ
さあ私の手を取りなさい

梯子を登るように急な
倉橋山の
険しい道でも
愛しい人と登れば
険しくはないさ

 

二首目は特に、罪人となって殺される悲運さえも、愛する人と一緒なら辛くはないという意味まで含めているのでしょうね。

 

かれそこより逃れて、宇陀(うだ)の蘇邇(そに)に到りましし時に、御軍追ひ到りて、殺せまつりき。

 

倉橋山を抜けて、宇陀郡曽爾村のあたりで追手に捕まり、二人は殺されました。

 

大楯の連

とりあえず速総別事件はこれで落着ですが、われらがヤキモチ皇后イワノヒメも、後日談として登場します。

 

その將軍山部の大楯の連(むらじ)、その女鳥の王の、御手に纏かせる玉釧(たまくしろ)を取りて、おのが妻に與へき

 

速総別と女鳥王を追っていった将軍は山辺の大楯の連という男だったのですが、彼は二人を殺害したあと、女鳥王が手首に巻いていた玉釧(数珠のような形のアクセサリー)を「お、コレいいやん」と言って勝手に頂戴してきて、奥さんにプレゼントします。

後日、奥さんはその玉釧を腕に巻いて、皇后の主催する豊楽(とよのあかり。パーティー)に出席します。

 

ここに大后、その玉釧を見知りたまひて、御酒の栢を賜はずて、すなはち引き退けて、その夫大楯の連を召し出でて、詔りたまはく、

「その王たち、禮なきに因りて退けたまへる、こは異しき事無きのみ。それの奴や、おのが君の御手に纏かせる玉釧を、膚も温けきに剥ぎ持ち來て、おのが妻に與へつること」と詔りたまひて、死刑を給ひき。

 

皇后イワノヒメは、みずから柏の葉に酒を注いで参加者に配っていたのですが、この玉釧を見ると、彼女を退席させて、夫の大楯の連を呼び出します。

「速総別と女鳥王は、不敬を働いたために討ったのです。当然のことです。ところでお前は、あの玉釧を、まだ死人の肌が温かいうちに剥ぎ取って持ち帰り、妻に与えたのだね」
と言って死刑にしてしまいました。

 

どういう罪状なのかいまいちハッキリ分かりません。
反逆者とはいえ皇族の持ち物を盗んだのが悪かったのか、死人の持ち物を再利用するというのが「穢れ」的な意味で良くないのか、あるいは死んでしまえばどうでもいいけど、肌が温かいうちは死にきってないので強盗殺人になっちゃうのか?

まあ律令もない時代なので皇后が死刑だと思えば死刑なんでしょうけど。

 

 

そんなわけで、最後まで強烈な皇后イワノヒメでした。

 

夫の浮気に厳しかったイワノヒメですが、仁徳天皇とのあいだには4人の男子を授かり、うち3人がのちに皇位に就くことになるので、たいしたものです。

次回からはその長男である、第17代 履中天皇の時代に入ります。

 

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