ハードディスクで眠っていた、30年前の仮想世界の論文を見つけて、もしもあの時代にNEMやnemlogがあったらどうなっていただろうかと考えてみました。ちょっとテーマとずれている気がしますけど、水曜お題記事として投稿します。
1990年、帝都大学の金本さとるによって発明された時系列結合型データ記録システム「トレイン」は、特に衆目を集めることもなく消え去ろうとしていた。当時の日本はまだ、ようやくNiftyServeがパソコン通信システムを完成させたばかりで、高額な通信費を払ってまでデータを保存しなくても、フロッピーディスクにバックアップを取っておけば良いという程度の認識だったのである。
しかし、この技術がMITの研究者の目に停まった。米国では冷戦を背景に、破壊不可能な通信ネットワークによって情報通信を確保する仕組み「インターネット」の開発が、軍を中心に進められていた。
研究者たちは、トレインの改良を進め、実証実験としてルーカスフィルムが開発していた仮想世界「ハビタット」の中で使われる通貨「トークン」の流通システムに組み込んだ。トークンは、仮想世界内でのヘッドやアイテムの交換媒体として、現実の通貨とほぼ変わらない価値を持ち、トレイン技術によって安全かつ完璧に管理され人気を博した。200X年に起きた米国全土を巻き込む大規模なサーバートラブル(一説によると国家規模サイバーテロ)とリーマン・ショックによって、銀行をはじめ多くの金融機関が機能停止し、ハビタットの全ユーザーの情報が中央サーバーから消失した際にも、トレインによって管理されていたユーザー間の取引記録によって、すべてのユーザーの情報と資産が再構築され、トレインの優秀さが証明されることとなった。この事件を契機として、社会インフラの一部をインターネット上の仮想世界に構築、1トークン=1ドルの交換レートとすることが米国議会によって定められた。
そのために、トレインはユーザーデータだけでなく、様々な情報や物流なども取り扱うことができるように拡張された。nemlogは当初、トレイン技術のひとつNEMとリンクした小規模なブログコミュニケーションシステムとしてスタートしたが、画像管理、ストア開設システムなどを次々に実現してこれに貢献した。NEMとnemlogは、トレインが苦手としていた大規模データやデジタル化できない物の取扱いを克服し、真の新しい経済活動「New Economy Movement (NEM)」を仮想世界に実現したのである。
仮想世界には、行政機関の窓口が開設され、選挙も自宅で投票するのが当たり前になった。トークンは、米国政府による強力なバックアップとその高い信頼性によって法定通貨よりも流通量が増え、不透明な政治献金は不可能になり、公約は永遠にトレインシステムに刻み込まれた。その結果投票率は実に95.8%にまで高まることになった。公約を発表した政治家のnemlogアカウントには常に支持者からのフィードバックが届けられ、投げトークンという形で活動資金が集まった。批判意見も集まったが、多くが政治家を応援する好意的なものであったのは驚きである。
行政機関の予算配分も、すべてが透明化され、税金の徴収や使用は国民によって常時監視された。その一方で、福祉に回る予算の透明性も確保され、高齢者や生活保護世帯への補助金は、本当に困っている人に必要十分な額が配分されるようになった。補助金の使用についてはトレインシステムによってオープンにされたため、不正受給者は、nemlogスコアの没収という形でペナルティーを受けることになった。プライバシーが守られないという批判も当初あったが、多くの受給者がつつましい生活をし、創作活動や情報発信を通じて世間に訴えかけるという形でnemlogスコアを上げる努力をしたため、彼らのnemlogアカウントには善意の寄付も届けられ、社会的なセーフティーネットとして定着した。
芸術や著作、報道の分野にも大きな変化が訪れた。これまで中間マージンで運用されていた著作権団体や情報制限によって不当に利益を得ていたマスコミは衰退し、製作者と購買者がトークンを介して直接取り引きをすることが普通になった。企業や団体ではなく、トレインが著作権を守ってくれるからである。さらには、これまで活動を制限されていた障害を持つ人達による創作活動も、仮想世界とつながることにより可能になった。創作に対して正当な利益が与えられる仕組みが実現し、今では、仮想世界のストリートで音楽を演奏するアバターに、聴衆が直接トークンを渡す姿をあちこちで見かけることができる。
変化は教育にも及んだ。仮想世界に作られた学校では、世界の一流の講師による講義が24時間いつでも無料で聴講可能となり、現実世界の学校に通えない貧しい国の子どもたちでも高度な教育を受けることができる場所になった。特別講師として、政治家や芸術家、スポーツ選手やノーベル賞学者が呼ばれ、彼らに子どもたちから厳しい質問がぶつけられることも日常茶飯事である。教育や研究のための資金も、それぞれの教育者、研究者のnemlogアカウントに行政機関や支持者から直接届くため、情報や医療分野を中心に、優れた教育や研究には継続的に資金が集まる仕組みができあがった。
インターネット上に構築された、仮想世界の繁栄は永遠に続くかと思われた。陣内わびすけが発明したAIによる世界規模のサイバーテロ(映画:サマーウォーズ参照)が引き起こされるまでは…
という感じで、サマーウォーズ大好き人間としては、ブロックチェーン技術があればOZみたいな仮想世界が実現したんじゃないかと普通に思ってしまうわけです。久しぶりにまとまった量の文章を書いたので、どうもまとまりが悪いですが、
今回も読んでくださってありがとうございます。
目指せ北海道
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