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「論語と算盤」の話 ①

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2019-10-10 21:44:24
「論語と算盤」の話 ①

2024年より新紙幣が発行され、1万円札の肖像として選ばれたのは「渋沢栄一」です。

 

1万円札は日本におけるお金の象徴であり、私が物心ついたその時から「諭吉」がお金の象徴として崇められ、そして「諭吉」に感情を揺さぶられながら人生を歩んできました。

しかしながら、その「諭吉」の功績についてはあまり良く知っておらず、名著「学問のすすめ」を読み込み、なぜ福澤諭吉が1万円の肖像に選ばれたのかについて学ぶこととなりました。

 

今回は新1万円紙幣の「渋沢栄一」について、その著書「論語と算盤」を読み、渋沢がなぜ新1万円に選ばれたのかについて考えてみたいと思います。

 

渋沢栄一とは

 

渋沢は江戸時代末期に農民(名主身分)から武士(幕臣)に取り立てられ、明治政府では大蔵少輔事務取扱となり財政政策を行いました。内閣入閣の話もありましたが、日本の国富を増進するためには商売を増進しなければいけないと考え、実業家に転じ、第一国立銀行や理化学研究所、東京証券取引所といった多種多様な会社の設立、経営に関わり、それらの功績を元に「日本資本主義の父」と称されています。

 

論語を通じた経営哲学でも広く知られており、今回ご紹介する「論語と算盤」は大正5年に初版が発行され、筑摩書房が、2010年刊行した『現代語訳論語と算盤』は新紙幣発表の影響もあり、累計発行部数25万部を突破する大ベストセラーとなりました。

 

論語と算盤

 

渋沢は大正5年(1916年)に『論語と算盤』を著し、「道徳経済合一説」という理念を打ち出します。

幼少期に学んだ『論語』を拠り所に、倫理と利益の両立を掲げ、経済を発展させ、利益を独占するのではなく、国全体を豊かにする為に、富は全体で共有するものとして社会に還元することを説きます。

 

国の富をなす根源は仁義道徳。正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ。ここにおいて論語と算盤という懸け離れたものを一致せしめることが、今日の緊要の務めと自分は考えているのである。

(第22項)

 

そして、道徳と離れた欺瞞、不道徳、権謀術数的な商才(いわいる口がうまいだけ)は、真の商才ではなく、人の世の中に立つための武士的精神と商才を併せ持つこと(士魂商才)が大切であり、したがって商才は道徳と離れないものであり、道徳の書である論語熟読することで商才を磨くことができるといいます。

 

人の世に処せんとして道をあやまらざらんとするには、まず論語を熟読せよ

(第26項)

 

論語と算盤は道徳の書「論語」を軸に据えた経営哲学書であり、現代にも通じるビジネス書となっています。

今回は以下に、渋沢の処世と信条について、私が気になったところについてまとめていきます。

 

人の観察方法

 

人柄を初めてあった時にその人をよく観ることが大切だと渋沢はいいます。

たびたび会うようになってからでは、人の噂や理屈や事情など考えすぎてしまうため純粋に観察することができなくなるためです。

論語には「子曰く、その以いるところを視、その由るところを観、その安んずるところを察すれば人いずくんぞ癨さんや」という言葉があり、これは視、観、察の3つをもって人を識別することの大切さを説いているが、視るは単に外形を肉眼によって見るだけのことで、観るは外形よりもさらに立ち入ってその奥に進み、肉眼のみならず、心眼を開いて見ることをいいます。

つまり、論語に書かれた人物観察法は、まず第一にその外部に顕れた行為の善悪正邪を相し、さらにその人の安心はどこにあるのか、その人は何に満足して暮らしているのかを知ることにすれば、必ずその人の真人物が明瞭になるということです。

 

行為と動機と満足する点の三拍子が揃って正しいことが、その人物が徹頭徹尾、永遠まで正しい人である

(第31項)

 

私自身は日々多くの患者さんと接していますので、人を視るということに慣れています。特に初回はカルテなどの情報を余り見ないようにして、私情を挟まずに視るように心がけています。そのため慣れもあると思いますが、ある程度直感的に人物を観察できるようになってきました。すごいセラピストになると初回の患者さんと話をする前(挨拶からリハビリ室に入る動作、所作の観察)にある程度の病状と人柄がわかるといいます。

 

最近の詐欺案件もかなり巧妙になっており、プロの詐欺師は心理学にも精通していますので、自身の視る目を養うことは自身を守るということに繋がります。

 

時期を待つこと

 

絶対に争いを避けようとするれば、進歩する見込みも、発達する見込みもなく、社会が良くなっていくためには争いは必要であり、そして、争いを避けることができないと同時に、時期が来るのを気長に待つということも、処世の上には必要なことであると渋沢は言います。

 

「この世のことはかくすれば必ずかくなるものである」という因果の関係があるので、すでにある事情が因をなしてある結果を生じてしまっている所に、突然横から現れて形勢を転換しようと争ってみても、因果の関係の前には無駄な努力であり、人力では到底形勢を動かすことができないのです。

 

そのため、争ったところで形勢を変えることはできないので、折に触れて不平を漏らすぐらいにして、あえて争わず、時期を待つのが良いのだといいます。

 

ただし、自分の信念や正しい道を曲げようとする者がいるのであれば、それは断じて争わなければいけません。

 

つまり、成長のためには争いは必要ですが、結果が出ているものに対して争っても良い結果になることはなく、じっくり「待つ」ということが大切になるということです。

 

なかなかこの「待つ」という作業は根気がいることですが、時期を見極めるということが不要な争いを避け、自分の新年を貫くためには必要なのだと思います。

 

逆境への対処について

 

水に波動があるように、空中に風が起こるように平静な国家社会においても、大小問わず変化の時期があります。そして、それらの変化は人生に小さな波乱を巻き起こし、時には逆境に立たされることもあるかもしれません。

このように自然的に生じた逆境に陥ったときに、どのように対処するか?

 

渋沢は、このような逆境は自己の本分であると覚悟をして、天命であるとあきらめることで心を平らに保つことができるといいます。

 

逆境を「人為的」に解釈して、人間の力でどうにかなるものと考えて対処すると、いたずらに苦労の種を増すばかりか、労して功のない結果となり、逆境に疲れてしまうだろう

(第44項)

 

そのため、自然的に逆境に陥ったときには、まずは天命に従い、来るべき運命を待ちつつ、その間に勉強し続けることが大切なのです。

 

衆人の智、以て天を測るべくんも、兼聴し独断するは、惟れ一人に在るのみ

(一般人はその智識によって天の運行や運命について推測できるが、それらを基にして決断をできるのは天子だけである)

 

私はどちらかといえば「自分の力」で道を切り開きたいと思う方なので「待つ」とか、「流れ」に身をまかせるというのが非常に苦手です。

しかしながら、海や蟻地獄と一緒で、もがけばもがくほど深く沈み、溺れることは誰しも経験のあることではないでしょうか。

 

まとめ

 

これらのような処世術は個人のみならず、一企業の在り方についても適用することができると思います。そして、それを実行してきた結果が「実業界の父」と渋沢がいわれる所以なのだと思います。

 

次回は更に「論語と算盤」を読みすすめ、渋沢の修養方法や道徳感についてまとめていきたいと思います。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

参考図書:

渋沢栄一「論語と算盤」

日本実業界の父が、生涯を通じて貫いた経営哲学とはなにか?

「利潤と道徳を調和させる」という、経済人がなすべき道を示した『論語と算盤』は、すべての日本人が帰るべき原点である。明治期に資本主義の本質を見抜き、約四百七十社もの会社設立を成功させた彼の言葉は、指針の失われた現代にこそ響く。経営、労働、人材育成の核心をつく経営哲学は色あせず、未来を生きる知恵に満ちている。

(BOOKデータベースより引用)

 

 

Comment
7zoesan
7zoesan
2019-10-11 12:44:09ID:152712

>>matsuno::さん>>やそ::さん
アダムスミスの時代からいつも言われているんですけどね、資本主義には道徳が必要なのは。
結局ここに戻ってくるんですね。
こんどこそ!

7zoesan
7zoesan
2019-10-11 08:28:52ID:152664

>>ちくぽか::さん
笑難しすぎてまとめるのにものすごく時間かかります!
いつも読んでくださりありがとうございます!

matsuno
matsuno
2019-10-11 07:06:06ID:152644

渋沢栄一の思想が資本主義にきちんと反映されることを望みます。
というより、そうしないと価値が生まれない世代に入ってきてしまいましたね。

やそ
やそ
2019-10-11 06:44:40ID:152632

道徳と離れた欺瞞、不道徳、権謀術数的な商才(いわいる口がうまいだけ)
という人が儲けている、これこそが資本主義!と言われているような世の中で、渋沢栄一は見直されてもいいのかもしれません。

ちくぽか
ちくぽか
2019-10-10 22:50:47ID:152573

また難しそうな本攻めてますね〜
最後の逆境の対処法は
ひとまず諦観して何が起きているのかよく見てみろよってことでしょうけど、渦中の人が狙ってできるもんじゃないですよね!
それができたら渋沢になれるかもw
次も楽しみにしてます!

この記事を書いた人
北海道で理学療法士兼スポーツトレーナーとして活動しています。 これまでの臨床経験から得た気づきや学びに関すること、 日々の読書の備忘録など、徒然なるままに健康と幸福と自身の人生観についてアウトプットしていきたいと思います。 NEMはあまり関係ないことが多く、申し訳ありません!! ツイッターもはじめましたので、よかったらフォローお願いいたします。