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「漠然とした不安について」の話

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好きなことを仕事にできて、家族にもめぐまれ、やりたいこともそれなりにできている。

そんな生活を送っていても漠然と不安を感じることはあります。

 

このまま今の職場に定年まで働けるのか、定年まであと何年だろうか、あと30年近くも同じ道を通うのか、家族とはこのままうまくやっていけるだろうか、子供は学校でうまくやっていってるのだろうか、私に残されている時間はあとどの程度なのか、休日になっても月曜日の仕事のことが思い浮かんで心からリラックスできないこともある、事務長(上司)に出した報告書どうなったかな・・・etc

 

17世紀、イギリスの哲学者トマス・ホッブズは人間の感情において最も根源的なのは恐怖であり、不安であるといいます。つまり人間は元来不安を感じるようにできているということです。

 

ホッブスによれば、人間というものは利己的で、自分が幸福になるためだけに生存する身勝手ないきものであり、そして、それぞれにチャンスは平等にあると考えました。

だからこそ、お互いにお金や財産が奪われるのではないか、他人に出し抜かれるのではないかとビクビクしてしまうそうです。

そして、そういう状態こそ人間の本来の姿、「自然状態」であるとホッブスはいいました。

 

ホッブスが生きた時代のイギリスはピューリタン革命(1642年に始まった英国の市民革命。 チャールズ1世の専制政治に反対したクロムウェルらのピューリタンを中心とする議会派が、1649年に国王を処刑して共和国を樹立)の真っ最中であり、ホッブスの「自然状態」は血で血を洗う戦争を間近でみてきた中から生まれたリアルな体験によるものでした。

 

暴力的で野蛮な「自然状態」においては、相手を欺き、出し抜くことだけが美徳であるような一億総睨み合いの状態であり、自分以外はすべて敵、万人の万人による戦争状態になります。

 

この状態の中での「死ぬまで続く恐怖」と「常時恐怖にさらされていたら身がもたないからお互い刺し合うのはやめましょう」という「理性的な打算」が人々が戦争状態を調停するきっかけとなるとホッブスは考え、「主権者」を立て、その人に自分たちのすべての権限を明け渡して服従する変わりに、身の安全を保証してもらい、各自にらみ合いの戦争状態を脱すること、これがホッブスの打ち出した「社会契約説」でした。

 

自分以外のすべての他人が、自分の幸福や野心の追求を脅かしてくる、そんな「人が人にとって狼」であるような自然状態における「恐怖」こそ、人間の根源的な感情であり、漠然とした「不安」の原因なのです。

 

現代におけるSNSによる「一億総監視状態や」不特定多数の攻撃による「炎上」「私刑」は500年前にホッブスが描いた「自然状態」と相通じるものがあります。

 

このような「自然状態」の中で生き残るためには、油断せず、慢心しない、腰は低く、敵は作らず、常に前後左右の点検を怠らない生き方、「臆病である」ことが条件になります。

ですのでこのような世界で生きることを決めたのであれば「不安」はむしろデフォルト状態であるとした上で、そうした「不安」によって日々自分を見つめなおすことができるのだと考えるとよいということになります。

 

そして、この「不安」から完全に抜け出したいのであれば、この「自然状態」から逃げる必要があります。

SNSをやめ、他人の価値観や評価の中で生きることをやめ、自分の人生を自分らしく生きることで自分の人生に「不安」を感じることは少なくなるのかもしれません。

 

どのような生き方を選ぶかは自分次第ですが、自分の「不安」とうまく付き合い、コントロールする術を身につけることは余計な「悩み」を減らしてくれるのだと思います。

 

「わが生涯における唯一の情熱は、恐怖であった」

トマス・ホッブス

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

参考図書

小林 昌平「その悩み、哲学者がすでに答えを出しています」

 

 

 

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