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【小説】わたしの宝箱

nem3.40xem (4) 261 3 1
Maminem 2019-11-23 00:14:11
わたしが初めて生身の人間に恋をしたのは
19歳の春だった。
 
そう、
言うまでもなくかなりの遅咲きである。
 
今さらなぜそのことを書こうと思ったかというと、
現代サスペンス作家として名を轟かせる東野圭吾がまだ有名になる前のユーモア小説「怪笑小説」を読み、私も今までにない文体、表現で文字を起こしたくなったからだ。
 
それとあと一つ、
自分の数少ない恋愛歴を大切に大切に宝箱にいれて置いてしまったせいでついにはその中身がなんだったのかと忘れてしまいそうだからである。
 
 
今日は鍵をかけて引き出しの奥にしまっておいた宝箱をあけると同時に、あぁ大したことないことにたいそう一生懸命になったものだと過去の自分を今の自分が笑うことに期待したい。
 
時を遡ること
今から24年前
 
立て続けに男の子ばかり授かってきた父と母は四人目にしてようやく生まれてきた末娘のわたしをとても可愛がった。
 
舞踊、ピアノにバレエのレッスン。ありとあらゆる習い事を与え、
変な男に捕まらないようにと中高一貫の女子校にまでいれた。
 
すべて間違いだった。
 
わたしはありとあらゆる屁理屈で習い事を断捨離し、
最終的に「ピアノと学校どちらを辞めるか」の究極の選択肢を親に与えることでついになんの教養も持たない完璧な腐女子になった。
 
こうして迎えた大学入学
キャンパスに足を踏み入れた私の姿は
さながらはじめて月面着陸に成功したオランウータンそのものである。
 
 
家族以外に出会う異性環境に戸惑うも、校舎やそれが放つオーラすべてが真新しく、しどろもどろと歩く足裏の奥にはドキドキとわくわくに溢れていた。
 
中でも、一番感銘を受けたのが
今まで校則が厳しく中高で触れることができなかったコスメや煌びやかに髪を染めた女の子たちにたくさん遭遇したことだ。
 
わたしはすごく憧れた。そして何もかもすぐに真似をした。
 
華麗なる大学デビューである。
 
髪を丁寧に巻き
何重にもマスカラを重ね、
母に注意されても丈の短いワンピースに何度も腕を滑らせた。
 
少しずつ少しずつあか抜けていく自分の姿を鏡にうつしながら、気持ち悪くもうっとりしていた。
 
転機が訪れたのは大学入学の二ヶ月目のことだった。 
 
「ねぇ、ちょっといいかな?」
 
ほんの少しほどしか話したことがない同じ学部の男子グループの一人に呼び出されたのだ。
 
サンサンと太陽の光が突き刺さるベランダで彼の「一目惚れ」というタイトルのプレゼンテーションが始まった。
 
わたしは日焼け止めを塗り直したいというよこしまな気持ちを抱きながら話しを聞いた。
 
「じゃあ今度の日曜にご飯でも」
彼のプレゼンが終わったのを確認しベランダを出ようとする。
 
ガチャガチャ…
 
ドアが、あかない。
 
内側から綺麗に鍵がかかっていた。
 
男子グループの一味の仕業である。
 
「もうおまえら付き合っちまえよ〜」
 
二重に施錠されたドアの向こうからケラケラ笑う声がたくさん聞こえた。
 
プレゼンしてくれた男の子は優しかったし誠実そうな人ですぐに仲間を叱ってわたしを解放してくれたのだけど、
 
陽に当たりすぎた赤い頬
背中をつたう冷たい汗
情けなく萎れていく巻き髪と自分の心
 
今まで目一杯、大学デビュー戦に控えて準備してきたはずの自分の有様があまりに無様で悲しくて、
ご飯に行く約束をその場で断った。
当然、付き合うこともなかった。
 
側から見たらどうってことのないこの小さな出来事もわたしにとっては大事件だった。
 
この一件でわたしは異性と話そうとすると【裸の大将の口調になる】という能力を手に入れたのだ。
 
それからというもの、
長い茶髪を長引かせワンピースを着た裸の大将は、ひたすらバイトとマクロスFとけいおんと初音ミクとゾンビ打に打ち込んだ。
2ちゃんねるでアスキーアートを無差別にぶち込むようになったのもこの頃である。
 
そんな昼と夜が逆立ちした自堕落な生活にも一筋の光がさすようになる。
 
彼とはじめて出会ったのは、大学生活2度目の桜がさくころだった。
 
思えば、同世代の女の子たちが「経済学部の彼」から「社会人の彼」に山手線を乗り換えるようにさくさくと新宿駅のダンジョンを攻略していく中で彼とわたしは各駅停車のごとくゆっくりとイベントをこなしながら小さくも穏やかな田端を冒険をしていたように思う。
 
 
 
 
著者 西野圭子〜「わたしの宝箱」
 
ーつづくー(完)             
 
 
 

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Comments from NEMber
matsuno.nem
2019-11-24 08:33:36ID:160775

文体がスッと読みやすいです!
つづきは。。

ころん
2019-11-23 12:07:07ID:160676

ふむふむ🎵

やそ
2019-11-23 06:51:11ID:160630

つづ、、、かない?!

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