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「親バカと探検家」の話

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私の勝手な心のメンターである冒険家、角幡 唯介の著書「探検家とペネロペちゃん」を読みました。

本書は雑誌「小説幻冬」に連載された「ペネロペちゃん」をまとめた父親エッセイ本となっています。

 

冒険家の二重螺旋構造を共有する愛くるしい娘「ペネロペちゃん」の成長と角幡の父親と冒険家としての心の葛藤や変化を滑稽かつユーモラスに綴った本書は多くの父娘あるあるに溢れる親バカ肯定本となっており、同時に娘から突きつけられる現実に父親としての悲哀も赤裸々に語られています。

角幡家と家族構成を同じくする同世代の私も例に漏れず、同じDNAを受け継ぐ娘を溺愛する父親であり、我が娘のマザーテレサ並の慈愛に満ちた優しさと小2にして処女作を生み出す天才的っぷりを自慢せずにはいられない父親です。

https://nemlog.nem.social/blog/11691

 

私には娘がいる、しかもこまったことに私の娘は異様にかわいい。異様にかわいいのだ。

誰がみてもかわいい、私の娘を見るとほぼあらゆる人が、かわいいですねぇと声をかけてくるわけで、そのかわいいは社交辞令ではなく言葉の真の意味でかわいいのだ。

それほどかわいい娘がいるだけに長期の探検に出かけるとき、私は身を引きちぎられるようなつらい、そして切ない思いをする。好きでやっていることとはいえ、なんでこんなかわいい娘を家において自分は北極くんだりに行かないといけないのか、と。

 

本書で角幡は妊娠、出産という行為は本質的に角幡が行っている冒険や探検といったことと同様なことだと考えるようになります。

圧倒的な自然の中で死を身近に感じることで自分の生の中に死を取り込み、そのことによって自分の生をはっきり認識できるようになる、だから冒険家や登山家は性懲りもなく、極地やジャングルやヒマラヤに向かうのだと。

 

出産という生命現象にもこうした冒険行為による自然体験、命実感活動と近い側面があるのではないだろうか。

子供は性欲という人間の本能=制御できない衝動、すなわち自然によってつくりだされた別個の生命であり、別個の生命である以上、いくらわが子といえども親には完全に管理制御できず、その意味で子供は自然そのもの、極地そのものであるからだ。

つまり妊娠とは胎児という大いなる自然を自らの肉体に取り込んだ状態なのだ。

 

同時に子供が産道を通り、この世に出てきて、まったくの無垢で無力な存在が世界を獲得していく過程も角幡が探検に求める本質そのものであり、未知を発見するという究極の探検であると考えます。

そのように考えて子供を観察してみると、いかに子供が言語や単語を獲得していくことによって混沌とした世界を分類して秩序立てているかがわかります。

子供がまったくの未知のものに触れる感覚を”羨ましい”と角幡は表現していますが、たしかに大人になった私たちは言語化することによって世界を認識しており、言語以外の感覚が失われているような気がします。

だからこそ、その感覚を取り戻すような大自然に身を置くことを必要としているのかもしれません。

 

また、本書のエッセイの1つに「父の責任」という話があります。

文化人類学者であるマリノフスキーの「未開社会における性と抑圧」という本の一節、「文化のレベル高くても低くてもほとんどの社会で、おとこは結婚の契約を強制する社会の圧力によらなければ、自分の子供に対してもどんな責任ももちたがらない」という言葉を引用して、父親の本質について語ります。

同じ類人猿でもゴリラとチンパンジーの父親の子育てに対する姿勢は異なり、チンパンジーには乱婚ゆえに誰が父親かわからないため子に「父親」が存在しませんが、ゴリラは乳離れして父親のもとに集まった子供たちの喧嘩の仲裁をしたり、子供を保護したりすることで、子供たちの憧れとなり信頼を集めることで父親としての役割を発揮できるようになります。

そこには血の繋がりや二重螺旋構造の共有といった生物学的な繋がりが「父親」を規定するのではなく、「父親」の本質は実体のない家族内部の機能を指し、メスと子供の双方から二重に選択されてはじめて「父親」となれるのです。

つまりいくら父親が「俺が父だ」と自分の父親としての自覚と自分的父親像を振りまいても、それは子供、妻の双方から認められなければ「父親」として認めてもらえないのです。

一方で母親は妊娠、出産、授乳を通じて生物という肉体的存在として否応なく子供と繋がっているため、母親は最初から「母親」であり、その実体は明確に示されているのです。

このエッセイを読んだ時に、非常に納得感があり、妻や娘から虐げられる世のお父さんの悲哀の理由がわかったような気がしました。

やはり、男は娘や妻から尊敬されるよう「ゴリラのような父」にならなければいけないようです。

 

本が面白いかどうかは読者が決めるのと同じように、お前が父親かどうかは家族が決める。それが実体のない概念にすぎない、俺たち父親族の宿命だ。

 

家族を愛するすべての親バカ父に読んでもらいたい本です。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!!

 

紹介図書:

角幡 唯介 著「探検家とペネロペちゃん」

 

読書イベント本日23:59まで!!👇

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