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小説『ディーヴァ』その3

nem7.75xem (8) 153 4 1

「おかしいな・・・」

 

「かせい」は、今回も投票をしていない。

 

一体どうしたのか、何か問題があるのかと「かせい」に直接聞くことができれば話は速いのだが、あいにくそういったことはできない。

所有者とDVAが直接対話できるようなインターフェイスは提供されていないのだ。

 

要は民業圧迫を避けるということらしいのだけれど、スマホやパソコンに向かって質問をすると、AIが参照可能な情報の中から適切な答えを探して返してくれる機能、民間のソフトウェアメーカーが提供しているアシスタントAIと競合するような機能は、国が運営しているDVAシステムからは提供しない、という方針に今のところなっている。

 

「すいません、お勘定おねがいします」

 

ぬるくなったコーヒーを飲み干すと、僕は立ち上がってマスターの差し出したレジ端末を受け取り、見つめ、画面に指で触れる。

 

やはり虹彩認証と指紋認証で、僕の支払い用口座から代金が引き落とされる。

今どきは買い物も食事もたいていコレだ。日本円以外にも、ドルやビットやゼムを口座に入れておけば、それらの通貨で支払うこともできる。

僕の場合は「かせい」が稼いできたゼムもコーヒー代の足しにできるので、助かっている。

 

まいどあり、またねと言っているマスターにおじぎを返して店を出ると、日はすこし傾きかけていた。ジャンパーの前を閉めておこう。

春めいてきたとはいえ、夕方になるとまだずいぶん冷える。が、歩いているうちに体は温まるだろう。

 

「DVAサポートセンターへ発信」

 

スマートフォンにそう指示を出し、呼び出しているあいだにポッケからイヤホンを取り出す。

ディスプレイには「呼出し中・・・」の文字。けやきの葉を透かした木漏れ日が、画面にキラキラと反射している。

 

「はいはい、DVAサポートの栗原でーす」

「あ・・・ もしもしっ・・・」

 

唄うように抑揚の過剰な女性の声に、ちょっとビックリしてしまった。

こういうのはAIナビゲーターの機械音声が電話に出るものだと思っていた。

クレーム対応などのストレスが大きい割に時間あたりの生産性の低いコールセンターのような仕事は、大部分がAIに置き換わっているのだ。

 

「えーと、坂本サトシさんの端末からの発信ですね。お電話口はご本人?」

「はい、そうです」

 

特に非通知設定で発信しなければ、僕が何者なのかは自動的に相手に通知されることになっている。

こちらのスマートフォンの画面にも

 

DVAサポート窓口

オペレーター

栗原ミサト

 

という文字が表示されている。

 

「今回はどういったご相談で?」

「うちのDVAが、最近、ぜんぜん投票をしていないんです。ここ1ヶ月くらい。何らかの不具合なのか、それとも正常に動作しててもこういうケースはあるものなのか・・・」

「フムフム、投票をしないということですね。言論活動はどうですか? やってます?」

「文章を書いたり読んだりは、普段通りやっているようです」

「投票だけやっていない、と。1ヶ月間まったく、例外なく無投票ですか? それはちょっと例がないですね。1回や2回、DVAがきちんと考えた上で無投票というのは正常な動作として普通にあるんだけど。何かエラーメッセージは出てません?」

「ないです」

「そうですか。何だろうなぁ・・・

 じゃあ、ちょっとリモートで中をのぞいてみますね。所有者さんの承認が必要なので、スマホの画面で承認ボタンを押してもらっていいですか?」

 

DVAサポート窓口 オペレーター 栗原ミサト があなたのDVAへのアクセスを求めています。許可しますか?

というダイアログが表示されている。

OKのボタンをタップする。

 

「ハイ、承認ありがとうございます。では見てみますね・・・っと。確かにエラーは出てないな。それじゃ、動作確認プログラムを走らせてみるので、ちょっとお待ちください」

 

栗原ミサトがそう言うと、スマートフォンの画面には「診断中・・・」というダイアログが表示される。

 

「あの、このテストプログラムって、公式ページにあるのとは別物なんですか? そっちでの診断は一応やってみたんですが」

 

政府のDVA公式ウェブページには「DVA診断プログラム」のボタンがあり、これを押すとDVAが正常に動作しているか、最新のアップデートが適用済みか、新しい公開情報や文献の学習が正常に行われているか、等のチェックが無料でできるようになっている。

 

「あ、それ知ってました? 今やってるのも同じものです。
じゃあ、あんまり意味ないかぁー。ご自分で診断プログラム動かしてみた結果は、問題ないっていうことだったんですもんね?
参ったなぁ。正直なところ、これ以上公式サポートとしてやってあげられることって、無いんですよねぇ」

「え、もっとこう専門家ならではの見立てみたいなのはないんですか?」

「その専門家ならではの見立てが、全部診断プログラムに含まれちゃってると言いますか。正直に言っちゃうと、自分で公式ページを見て診断プログラムを実行できるくらいのリテラシーがあるような人の役には立てないですよ電話サポートは。電話サポートっていうのは、自分で文章を読んだり調べたりできない人のためのものであって・・・ あ、診断終わりましたね。異常なしです。良かったですね!」

「えー」

 

このお墨付きを喜ぶべきなのだろうか。

たしかに現状の「投票をしない」という症状だけであれば、そこまで困るというほどの事もないし、手動で投票することもできる。これ以上の不具合が出たりしなければ、別にこのままでもいい。

しかし、サポートの人でも聞いたことのない症状だという点にはやはり不安が残る。

 

「と言って放り出されても困っちゃいますよねー。いや気持ちは分かりますよ? ただ、本当に公式として言えるのはこれだけなんですが・・・ これから話すのはあくまで噂というか、私自身むしろ怪しいくらいに思ってる情報なんですけど・・・」

 

ひと呼吸置いたあと、栗原ミサトは、ゆっくりと区切るように、言った。

 

「快楽ウイルス、って知ってます?」

 

 

つづく

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Comments from NEMber
ゼム🐳ゼム.
2020-03-24 21:34:45ID:180884

・w・すこ!快楽ウィルス!電子麻薬!

やそ
2020-03-24 21:28:26ID:180881

続いてるー!!!

7zoesan
2020-03-24 19:20:40ID:180865

快楽ウィルス!
なんじゃそりゃーってすっかりハマってます。
続き楽しみ。

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今年は小説を書きたいです。
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