
ありがとうございます。ちょっと面倒でしたが、自分でシートにコピペしましたw。
再生医療に利用される細胞の流通や製造工程をブロックチェーンに記録するために、岐阜大学歯髄細胞プロジェクトで開発を進めているのがShizuiNetです。この記事は、今年の実習用資料として使おうと思い作成しています。実習で、ウォレットを作ったり、投げネムをやってもらって、ブロックチェーンへの理解を深めてもらうのが目的です。また、できるだけ一般の方にも分かる記述をするよう努力します。
こちらが、現在構想中のShizuiNetコンソーシアム(同じ目的を持って集まった共同事業体)の構想図です。ShizuiNetは、親知らずや乳歯から採れる歯髄細胞を取り扱う「企業や研究機関」で共同利用されるブロックチェーンを目指しています。現在助成金を集めて、サーバー整備やデバイスの開発、協力機関への呼びかけなどをしながら、ShizuiNetの運用母体となる株式会社設立の準備中です。
歯髄細胞は、生え変わりで抜けた乳歯や、抜歯された親知らずのような医療廃棄物から採取できます。生きている細胞には、遺伝情報が入っていますから、提供してくださった方の個人情報とすぐに切り離して、DP0001などの記号で置き換えます。間違っても提供者の名前やイニシャルや、ましてやカルテ情報とリンクしてはならないので、この接続情報は破棄されるか、大学病院などで厳重に管理・保管されます。
外から見ると非常に硬そうに見える歯ですが、中心部には歯髄という柔らかいグミのような組織が入っています。この中に細胞がたくさん含まれています。歯髄にいるから歯髄細胞と呼ばれます。そして歯の中から取り出した時に、どんどん増える細胞がいて、これが歯髄幹細胞です。この歯髄幹細胞の仕事は、少しずつ歯の内側に新しい歯質を作って、歯を長持ちさせることです。ですからこの歯髄組織は年齢とともに細く、糸のようになっていきます。しかし歯が生きている限り幹細胞も働いていますから、乳歯や途中で抜けてしまった歯から、このような細胞を取り出して、再生医療に使うことができます。
若年者の親知らずを割ったところ。硬い歯質(上)の内部に柔らかい歯髄(下)が詰まっている。
歯髄の断片(オレンジ色の塊)から這い出して、どんどん増える歯髄細胞。オレンジ色の枠は一辺が0.1mm。
上の図で、矢印で示されたところが、ShizuiNetが記録する「プロセス」です。広い意味での細胞系譜になります。ShizuiNetのプロセスは、サンプルや細胞の移動(赤矢印:transferモザイクを使用)と、培養などの製造工程(青矢印:productionモザイクを使用)に分類できます。チューブやバッグにはバーコードがついていて、それぞれを区別できます。製造工程の中には、培養だけではなく、遺伝子を導入してiPS細胞を誘導したり、細胞の性質を引き出すための操作も含まれます。これらの工程は、一本のチューブに入っていた細胞が増えて複数本になったり、まったく別な性質を持った複数の細胞株に枝分かれします。起点と終点がバーコード情報になっており、モザイクの送付が方向性や関係性を表します。このようなツリー構造を記録するには、普通のデータベースよりも、ブロックチェーンのほうが相性が良いのです(理由についてはTAKASAKIさんが大変鋭いコメントをくださったので、Twitterを参照してみてください)。
ShizuiNetでは、工程ごとに様々な規格や大きさのバーコードを使用します。ShizuiNetが規格を定めても普及しにくいので、今稼働しているプロトコールや設備にShizuiNetをあわせこもうとしているためです。
細胞凍結保存用チューブの小型バーコード(1次元+DataMatrix)
乳歯送付用チューブのバーコード(QRコード)
培養皿に貼り付けたラベルにもQRコード
ShizuiNetに情報を記録するために必要なのは、バーコードリーダーとネットに繋がったPCです。基本的にバーコードリーダーをUSBでラズベリーパイにつないだものを使います。
これは、現在nemlogと同じNIS1というブロックチェーンに入退室を記録するのに使われています。昨年の実習で制作し、1年間クリーンルームの入退室管理端末として働きました。Amazonで買った汎用バーコードリーダーと小型のRaspberry Pi Zeroを使用し、大きめのQRコードや1次元コードを読み込めます。
無菌環境での使用に耐えられるように、バーコードリーダーとRaspberry Pi Zeroをケースに入れた一体型です。リーダー部は、小さなバーコードも確実に読み取れるよう、業務用の高性能な物になっています。
これは、大型装置への組み込みを考えた、セパレート型です。工場などで組み込み用途に使われるバーコードリーダーと高性能なRaspberry Pi4を使っています。高速な処理ができるため、Symbolテストネットのストレステストにも使われます。
ShizuiNetにはPCやスマホのブラウザを使って専用のエクスプローラー経由でアクセスします。一般のエクスプローラーに無い機能として、メッセージの検索が可能になっています。たとえば「K38」で検索をかけると、このような画面が出てきます。これはK38を名前に含む細胞が、いつ、どの凍結保存チューブに保管されたかを、実際に実験しながら記録したものです。その中のひとつのトランザクションの中身を見てみると 、、、
K38-2-P18という細胞がNA0001155210というバーコードのチューブに結び付けられてます。
タイムスタンプは2020-12-07 10:35:15。送付されたモザイクは、、、
testshizui.productionとなっているので、製造工程(この場合は凍結保存)であることがわかります。他にも似たようなトランザクションが2つあり、それぞれNA0001155209とNA0001155211というチューブにつながっています。また、この直前にK38-2-P18は消費されたのでtestshizui.consumptionというラベルが付けられたトランザクションもあります。これらを合わせると、K38-2-P18というラベルの書かれた培養皿から細胞を剥がして、NA0001155209, NA0001155210, NA0001155211の3本のチューブに入れて凍結保存したことが、トランザクション記録で証明できるのです。
このようにして、ShizuiNetはチューブとチューブ、培養皿と培養皿、あるいはチューブと培養皿の繋がりをトランザクションとしてブロックチェーンに保存して、細胞製造工程の全体図を紡いでいくわけです。
今後は、もっとモザイクの種類を増やしたり、樹形図を描かせてよりデータにアクセスしやすくするなどの発展を考えています。
以上が、現在のShizuiNetの現状です。医療従事者や患者さんには馴染みがない世界だと思いますが、安全に細胞を移植するために必要な技術として、こういうところでブロックチェーンが注目され始めているのです。
目指せ北海道
ありがとうございます。ちょっと面倒でしたが、自分でシートにコピペしましたw。
あー、残念ながらここにしかデータありません。ダウンロードサービスをしゅうさんが提供してくれるといいですね。Symbol解体新書はPDF化してNEMTUSの資料室に置いてあります。
https://nemtus.com/reference-room/
ご許可ありがとうございます。
貴重な投稿記事の内容はnemlog以外には保存されてないのでしょうか?
そうでない場合、初期データを集めるためにスクレイピングしないといけないのですが、できれば避けたいかなと。
はい、NEMLOGにあるデータでよければ、ご自由にお使いください。
いつも有益な情報ありがとうございます。
ノーコード開発で利用するデータとして、いままでの有益な情報を簡単なアプリとして提供したいと思っています。
データとして利用させていただく許可をいただけないでしょうか?
まずは、簡単にご連絡しました。
初発表がnemlogって感動です!
米国系の大学、喜んで共同研究してくれそうな面白さだなぁと、ふと思いました。寄付が集まり、優秀なパートナーに恵まれますように(^^)
はい、学会でも知っている人はほとんどいないと思います。でも、いろいろな人の応援やアドバイスを受けて、2年かけてここまできました。これからもっと内容を洗練して、ブロックチェーン(特にSymbol/mijin-catapult)を利用したプロジェクトといえばShizuiNetが上がってくるくらいに広まったら良いなと思います。
再生医療分野の事は全然存じ上げてませんが、ブロックチェーンはこんな所はにも使われているんだぞ!ってもっと広めたいですね!
勉強になります‼️
いえいえ、国内の再生医療分野でブロックチェーンがどうこうとか言っているのは、多分僕くらいしかいません。なので、このnemlog記事が最先端です。歯髄再生は神戸で始まっていますが、自分の歯を一本犠牲にして虫歯を治すという感じの研究段階です。ShizuiNetが普及する頃には、だいぶ進歩すると思います。がんばります。
はじめまして!再生医療医療は歯科領域のレベルが凄いと聞いておりましたが、ブロックチェーン技術も使えるのですね。個人的には変色した歯髄再生に興味があります。貴重な情報をありがとうございます(^^)